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early spring13 

early spring13


車から降りると…風が少し強かった。暖かい陽射しが降り注いでいても、暦はまだ2月…。冷たい風に体が縮こまる。

「寒っっ!何、この風っ!桜が散っちゃうよ…」

三洲は昨年、真行寺が編んでくれたマフラーを首に巻き、防寒対策もバッチリだ。

でも、当たる風は冷たい…。

二人で河津川の遊歩道を歩く。

河津桜は…。

ヒカン桜とオオシマ桜の自然交配種で、普通の桜よりも花が大きく色も濃い。河津川周辺を中心に約八千本も植えられているという…。桜の樹の根元には菜の花が植えられ、濃いめのピンクに黄色…どこかウキウキしてしまう、まさに「春」の色合いなのだ。

遊歩道は人でいっぱい…。人の波に押されながら歩く。真行寺は背が高いので、時々桜の枝が顔に当たりそうになる。

「おっと!あぶねっ!」

「あははっ」

「もぉ、笑わないでよぉ…。よそ見も出来やしない…」

「だって、お前さっきから、おっとあぶねっ!ばっかり言ってるじゃないか。ふふっ」

「俺だって言いたくて言ってるんじゃないのっ。しょうがないじゃん…」

「…無駄にデカイからか?」

「もうっ!意地悪!無駄じゃないもんっ」

「ムキになるなよ」

…ガキだな、ふふっ。

「むぅぅぅぅぅ~!」

むくれる真行寺を、サラリと無視して、あさっての方を見る。

「…あ、真行寺。色々店が出てるぞ?」

つられて、三洲が指差す方を見る。

「あ、ホントだ…って、アラタさ~んっ!」

「さっきの話は強制終了だ。キリがないだろ?腹が減った、真行寺」

言われてみれば…。腹の虫が、さっきから大騒ぎしている。朝ご飯は、コンビニのおにぎりだっけ…。美味しそうな匂いに誘われて、怒ってたことも忘れた。

「いい匂いしてくるね見てみる?」

「そうしよう」

二人は遊歩道から外れて、地元の人達が開いている露店を見に行った。
見てみると、色々ある。お花見弁当や、お土産物は勿論のこと、手作りのつるし雛まで売っていた。

「お花見弁当買おうよあとさぁ、焼き物?イカと…イイダコもあるそれと~」

「…お前、どんだけ食うんだよ?いい加減にしろ」

「い~じゃん、滅多にないんだから~。アラタさんは、どっちにする?イカ?イイダコ?」

真行寺のペースに乗せられ、思わず…。

「…イイダコ」

「俺は両方買っちゃお

結局、お花見弁当と串焼きを買って車に戻った。お花見弁当だから、桜の樹の下で食したいものだが…。いかんせん、あの冷たい風では…車の中なら暖かいし。

それに…。

イチャイチャ出来るっ

「ね、これ食べたらもう一度、桜見に行こ?」

「ああ、いいよ」

二人は膝の上に弁当を置き、まずは串焼きを頬張る。ちょっと醤油の焦げた香りが、食欲をそそる。

「やっぱ、焼きたては美味しいよね

「そうだな。このイイダコも柔らかくて美味いよ」

大きさも、ちょうど良い。ちょっと長めの串に、ちっちゃいイイダコが五つ刺さっている。

「マジで!?俺も食ってみよっと

真行寺はイカの串焼きを食べているのにも関わらず、イイダコの串焼きをパクリ。

「ん!ホントだ、柔らかくて美味しい

ニコニコしながら食べるさまは、無邪気な少年のよう…。そんな姿を見ていると、自然に笑顔が零れてくる…。

「そう言えば、今日泊まる所はここから近いのか?」

「えっとね、ちょっと離れてるかな…。桜見てから向かおっか?早く、ゆっくりしたいもんね

「…そうだな、朝も早かったし…真行寺も疲れてるだろ?」

「俺なら大丈夫だよ?アラタさんこそ、疲れてない?」

お互いを気遣ったりして…。

「俺は助手席に乗ってただけだしな…」

「うん可愛い顔して、居眠りしてたしねふふっ

「真行寺っ!」

いらんことを言うなっ。

車の外の寒さなど忘れてしまう程に、二人はラブラブであった…。そんな感じで、お花見弁当も平らげ…再び桜を見に行った。

「…ホント、綺麗だよね?」

ふと立ち止まって、桜の枝を手に取る…。桜は、ちょうど今が見頃。メジロも飛んできて、桜の枝にとまり羽根を休めている。そして、真行寺が三洲にそっと耳打ちをした…。

「花の色が…アラタさんの口唇の色と似てるね

「…はぁ?変なこと言うなよっ」

恥ずかしさも手伝って、ニヤニヤしている真行寺に、得意の肘鉄をお見舞いした。
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