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early spring20(完結) 

early spring20(完結)


居心地の良い、真行寺の腕の中…。

ひだまりのように暖かくて一足早く春が来たよう…。

「ねぇ…どうなの?」

「…満足してるよ…真行寺」

何でもかんでも…真行寺でなければダメなのだ。三洲の心を満たすのも、心を癒すのも真行寺…。

「…ホントに?」

「…ああ」

短く呟き、真行寺の胸に顔を埋めた。

「あ。ねっ、アラタさん?」

「…ん?」

「東京でも、桜見ようね?俺、弁当作るからっねっ、行こ、行こ?」

子供みたいな真行寺。

「…花見ばっかりだな?…まぁ、いいけどさ」

三洲がクスッと笑った。


~・~・~・~・~・~・~


そして、翌日。

少し早く目が覚めた三洲。東京へ帰る前に、朝風呂に入ろうと起き上がろうとすると、

「…っ!」

腰に痛みが走り、眉間に皺が寄った。頭の片隅に昨夜のことが、鮮明に甦る…。
もう一度、横になり腰を摩っていると、隣で眠っていた真行寺が目を覚ました。

「…ん…アラタさん、おはよ…どうしたの?」

三洲を抱き寄せ、白い頬にキスをした。

「…風呂に入りたいんだけど…腰が痛いんだよ」

「…えっ!?大丈夫!?…あっ、ごめんっ!俺…」

こちらもまた、昨夜のことを思い出した。急に、恥ずかしくなって、慌てて飛び起きた。

「あ、お、俺…風呂のお湯、張ってくるからっ!そのまま待っててっ」

真行寺は素っ裸のまま、風呂場へすっ飛んで行った。ふと、気がつく真行寺の背中の引っ掻き傷…。
大きい傷ではないけれど、ミミズ腫れが4本…クッキリと残っていた。
三洲自身も真行寺との営みに、夢中になっていたんだと思ったら、何だか笑えてくる…。

「ふふっ…あの傷…しみるかもな…」

一人で、こっそり笑っていると…。

「何、笑ってんの?アラタさん」

素っ裸の真行寺が戻ってきた。

「…何でもないよ。それより真行寺、浴衣くらい羽織れよ…寒くないのか?」

「うん、平気…。アラタさんは…腰、大丈夫?まだ…痛む?…ごめんね」

浴衣を羽織り、布団の脇に腰を下ろした。

「…別に謝らなくてもいいよ。いつものことじゃないか…」

三洲はもう一度起き上がって浴衣を羽織り、ゆっくりと体を動かしてみた。

「…っ」

まだ少し痛むのか、三洲は顔を歪める…。

「歩けそう?俺に掴まって…」

三洲は真行寺の首に、腕を絡めた。真行寺は、ひょいと三洲を抱き上げて風呂場へ…。お姫様抱っこされたのが心地好かったのか、三洲は珍しくおとなしく抱かれている。

「アラタさん、下ろすよ?」

「…ああ、ありがとう」

そっと、床に足をつく。

「じゃ、俺…部屋で待ってるからさ」

「真行寺」

立ち去ろうとする真行寺を三洲が止めた。

「…ん?何?」

「…面倒だから、お前も入ればいいじゃないか…」

「…え良いの!?」

実は、実は…待っていました、そのお言葉。

真行寺は、さっき羽織ったばかりの浴衣をパパッと脱ぎ捨て、嬉しさのあまり三洲を背中からギュ~ッと抱きしめた。

「何だよ、いきなりっ」

「だって、嬉しいんだもん

その姿は、まるで大型犬…。もしかすると…真行寺、尻尾があってブンブンと振っているのでは?

そう思ったのは、今が初めてじゃない…。そう、あの頃からずっと…。

「真行寺…腰に当たってるぞ…」

色っぽい目で睨みつけた。


~・~・~・~・~・~・~


そして、4月。

日中はもう、かなり暖かい。春も本番だが、時にまだ肌寒い日があったりする…。そんな中、東京の桜も見頃を迎えていた。
二人は昨年の冬に訪れた、あの東京の夜景が見える丘へ来ていた。わざわざ、こんな山に来なくても、有名なお花見スポットは幾らでもあるのに。
人が集う場所の桜は勿論、素晴らしいものがあるが…。この場所にも、たった一本だけど…大きな桜の樹があるのだ。
二人がこの世に生を受けるずっと前から、この場所でただ静かに東京の街を見守ってきたのかと思うと、これまた素晴らしい。

「…見事だな」

貫禄さえある、満開の桜を見上げて、三洲が呟いた。

「ここの桜も、アラタさんと見に来たかったんだ…綺麗だよね?」

レジャーシートを広げ、早起きをして作った弁当を置いた。

「…景色も素晴らしいな」

遠くから眺めた東京の街…。高いビルがいっぱい建っている。自分達の住んでいるマンションは…あの辺りだろうか?

「でしょ、でしょ!?…ねぇ、俺腹減っちゃった。お昼にしようよ~」

「もう食うのか?まだ11時前だぞ?」

腕時計をチラリと覗く。

「だーって…早起きだったしさぁ…」

「…しょうがないヤツだな」

真行寺の隣に腰を下ろすと、真行寺は嬉しそうな顔をして「そうこなくっちゃ!」と、早速弁当を広げた。

「…何だ、真行寺…この卵焼き入れてきたのか?」

「うんアラタさんが焼いてくれたのだから大丈夫、食べれるよ」

…ちょっぴり焦げた卵焼き。

三洲は真行寺をジロリと見て

「…だいたい、お前が悪いんだぞ?ヒトが一生懸命卵焼き作ってる時に、ちょっかい出しやがって…」

「だって、嬉しかったんだもん一緒に弁当作るなんて、滅多ないしさぁ」

「…あの時、お前があんなことしなけりゃ、もう少しマトモに出来たのに……やっぱり苦いぞ、これ」

自分で焼いた卵焼きを、一口食べてやめた。

「…だって、おはようのチューしてなかったから…ちょっと長めにふふっ

その時のことを思い出して、真行寺がクスクスと笑う。

「…笑うなよ、タマゴが無駄になったんだぞ?」

「アラタさんだって…気持ち良さそうだったじゃん?可愛い顔しちゃってふふっ卵焼きは、俺が食うから。無駄になんかなってないよ」

そう言って、卵焼きを頬張った。

「…うるさいなっ」

何が気持ち良さそうだっただ?俺はそんな顔してたのか?

鳥の唐揚げをパクリ…。

考えれば、考える程…恥ずかしい。
少しだけ火照った頬を冷やすように、春風がスーッと頬を撫でていく…。
ふと見上げれば、風に乗った桜の花びらがヒラヒラと、春の雪のように舞う…。

「ねぇ、アラタさん?」

「…ん?」

「来年も、また来ようね

真行寺がニコニコしながら言った、その口元。

「…真行寺、ちょっと」

そっと口唇を近づけ、真行寺の口角の横を掠めた。

「…もぉ。キスするなら、ちゃんとしてよ~」

「は?そうじゃないよ。ご飯の粒が付いてたから、取ってやったんだよ」

「…なぁ~んだぁ」

期待がハズレて、項垂れる真行寺。

「…そんなにガッカリすることないだろ?」

「…だ~って…」

せっかく二人っきりで、桜の樹の下にいるのだから…少しくらいイチャつきたいのに。

「…もう、そんな顔するなよ…それより…風が気持ち良いな、真行寺」

真行寺の肩に凭れ掛かった。

「…アラタさん?」

右肩に掛かる心地好い重みと、甘い髪の匂い…。閉じられた瞳を縁取る長い睫毛と、桜色した口唇に誘われる…。
誘われるままに、その柔らかい口唇にそっと触れた…。まるで、風が通り過ぎていくように。

「アラタさん…大好き

春の陽射しと同じくらいの暖かい言葉が、胸の奥にしみていく…。

「ね、来年も絶対ここへ来ようね

「…そうだな。今日みたいに晴れればな…」

やがて、桜の花は散りゆき若葉が芽生える。秋と冬を駆け抜けて…次の年の春、枝一杯に花を付ける。

それは、生きた証だから。

君とまた『ここへ来よう』と約束をした、満開の桜の樹の下で…。



fin.
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