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青空9 

青空9


「…ただいま、真行寺」

「あお帰り、わっ!…アラタさん、どうしたの?」

帰って来るや否や、真行寺に抱きついた…。ただ黙って真行寺の胸に顔を埋めている三洲。

「………」

「…もぉ、アラタさんてば…そんなに抱きつかれたら…襲っちゃうよふふっ

三洲を抱きたいのはホントだけど、ここは冗談めいて言ってみた…。

「…いいよ」

だからって、普通に軽く返されると…何だか躊躇してしまう…。冗談なのか、本気なのか…分からない。だが…三洲の様子がいつもと違うことは、真行寺にも何となくだが…分かった。

「…アラタさん…何か…あったの?」

真行寺は、三洲をそっと胸から離して覗き込んだ。

真行寺は知らない…。

三洲が会社でセクハラを受けていることなど…。だけど、このことを真行寺が知ったら…傷ついてしまうんじゃないだろうか?

「…ごめん…何でもないよ…」

「…ホントに?」

「ああ…。何となく、こうしたかっただけだよ…」

強く抱きしめてほしかった…。

「そっか、最近…ちょっぴりご無沙汰だから!?」

「…は?」

ご無沙汰だと?

前回から2.3日しか経ってないじゃないか?それはご無沙汰とは言わないだろうに。

「ふふっ今夜…しよっか?」

「…ば~か」

「あっ!もぉっ!」

「…あははっ」

「…ふふっやっと笑ってくれた

三洲の笑顔を見れただけで安堵する…。真行寺のペースに乗せられて、三洲も不思議と昼間の嫌な気持ちが、和らいだような気がした…。真行寺の前で、暗い表情は見せないようにしなければ…。真行寺は優しいヤツだから、すぐに心配をしてしまう。

「アラタさん。今日はね、美味そうな生鰹買ってきたんだ~

「…鰹?…珍しいな」

「下町の魚屋…あの、前に鯛を買ってきたじゃん?そこのおじさんがね、奨めてくれてさ~。だから、お刺身にして貰ったんだ

「…へぇ~」

「あと~、炊き込みご飯今炊いてるとこだよ。昨日は、俺夕飯作れなかったから…。アラタさん、カップ麺だけで腹減らなかった?」

「あぁ、少しだけな…。真行寺だったら、堪えられないだろ?ふふっ」

「カップ麺一個じゃねぇ~…全然、足りないよ」

「…だろうな、食いしん坊。ふふっ」

「あ。また、食いしん坊って言った!まあ、間違ってないけどさっ…」

「認めてるじゃないか」

「そうだよ。だから、アラタさん早くお風呂入ってきて?鰹で一杯飲もうよ

「ガキ臭いを通り越して、オヤジ臭いぞ?真行寺。あははっ」

“一杯飲もう”その言い方がオヤジ臭かった。

「もぉっ、俺オヤジじゃないからね!?アラタさんより若いんだからっ」

「何だよ、ひとつしか違わないだろ?大して変わらないじゃないか」

こんなことで言い合うなんて…二人とも、充分にガキ臭いと思う…。


~・~・~・~・~・~・~


三洲が風呂を済ませてリビングへ戻ると、もう食卓の準備も出来ていた。

「あ。アラタさん、座って座って飲も、飲も

「ああ」

真行寺が冷蔵庫から刺身とビールを取り出し、テーブルに運んできた。

「ジャ~ン!美味そうじゃない!?」

「そうだな、美味そうだ」

「おじさんがね、また安くマケてくれたんだ~

「そっか…。可愛がられているんだな、真行寺は」

別に厭味ではない。人懐っこい真行寺は、誰からも好かれるのだ…。

俺は…。

俺は、真行寺だけが俺を見ていてくれれば…それでいい。

「ねっ、アラタさんグラス」

「…あ、あぁ、ありがとう」

真行寺がビールを注いでくれた。

「…ほら、真行寺」

三洲も真行寺のグラスに、ビールを注いだ。

「ありがと…今週もお疲れ様、アラタさん

「…お疲れ、真行寺」

二人でグラスを合わせた。ビールを一口流し込み、鰹の赤い身を食す…。

「いただきま~す……んーっ!美味いっっ!…アラタさん、食べてみてよっ」

「うん、いただきます」


鰹を一切れ、口へと運ぶ…。

「…ホントだ、美味い。やっぱり生は違うな?これはビールが進むよ」

そう言って、またビールを一口流し込む…。

「…ねぇ、アラタさん。広瀬さんの結婚相手、どんな人かな?綺麗な人かな?ふふっ

真行寺も広瀬の晴れの門出を心待ちにしているようだ。
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