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青空12 

青空12


それから一週間が過ぎて、二人は紳士服専門店に来ていた。勿論、真行寺の礼服を選ぶ為…。

「…どれが良いかな?」

真っ黒だから、どれも同じに見えたりして…。大まかに言って、シングルかダブル、タキシード、モーニング…。まあ、ここは普通のブラックフォーマルにしておいた方が、無難?

「サイズ見て、試着してみろよ」

二人でコソコソ話していると、そこへ女性店員がやってきて二人に声を掛けた。

「いらっしゃいませ…礼服でございますか?」

「…あっ、はいっ…結婚式に出席するんで…」

「さようでございますか。こちらは当店イチ押しの商品でして、皺になりにくい素材で仕立てております。あと、撥水効果もありまして、少しの雨でしたら…このように手で払って頂くか、ハンカチで押さえて頂けば、水滴が浸みることはございません」

店員が丁寧にそのやり方を教えてくれた。

「…ねぇ、アラタさん…これにしようかな?」

「…これから何回か着る機会があるだろうから、良質な物を買っておけよ」

良い物は長く使えるものだ。少しくらい値が張ろうとも、ここはケチらずに…。

「うんそうだねじゃ、この中から選ぼっと…」

真行寺は、ハンガーに掛けられている礼服のサイズを、一着一着見ていく…。そして、その中の一着を手に取り、

「これ、試着してみますね」

店員に一言告げると、

「試着室はあちらにございます。どうぞ」

店員に案内されて、試着室の前までついて行くと、

「裾直しも承っておりますので、ご必要でしたらお申しつけ下さい」

「はいっ、ありがとうございますっ…。アラタさん、ちょっと待ってて」

真行寺は靴を脱いで、試着室に入った。カーテンを閉めて…。Gパンを半分脱ぎ掛けた所で不意に鏡を見ると、カーテンの間から顔を出している三洲と目が合った。

「うわっ!…アラタさん、何覗いてんの!?ビックリすんじゃんっ」

「いいじゃないか、他にすることがないんだから…。早く穿いてみろよ?パンツの丈も見てやるから」

三洲は何だか楽しそうだ。今日は試着室の中へは入らない…。ちょっぴり昔を思い出した。今は、たとえ忙殺されがちな時があっても…あの時みたいに苦しくはない。

真行寺と一緒にいる…。ただ、それだけで癒されていく。

「ねぇ、アラタさん…どう?」

Tシャツの上に礼服の上着も着てみた。

「肩とか窮屈じゃないか?」

「うん大丈夫だよ…ねぇ、俺カッコイイ!?…なんちゃって~!ふふっ

「…べ~つにっ?」

鏡を見て、調子こく真行寺に三洲は、ちょっぴり意地悪く言ってみる…。

「もぉっ…。ちょっとくらい俺のこと、カッコイイとか言ってくれたっていいじゃん…」

ブツブツ文句を言った。そりゃ、いつもカッコ悪いとこばかり見られてるから、カッコイイなんて…贅沢?だけど、たまには言ってほしい…一人の男として。

「…こんな時に煩いヤツだな?…そうだな、馬子にも衣装…ってところか?あははっ!」

「もぉっ!それって、褒め言葉じゃないじゃんっ…意地悪っ」

しかも、笑い過ぎ!

三洲はやっぱり…楽しそうだ。

試着室の中と外。二人で騒いでいると、そこへ先程の店員が声を掛けてきた。

「…あの、お客様?如何でしたか?」

その声に驚き、慌てて真行寺が応える。

「あっ!はいっ、大丈夫ですっ…。パンツ丈を…少しだけ直して貰えますか?」

「はい、承りました。では、まち針を留めさせて頂きますね…失礼します」

店員は真行寺の足元にしゃがみ、手首に付けたピンクッションからまち針を抜き、パンツの裾へまち針を丁寧に留めていく。

「…お客様、モデルさんなんですか?」

店員から思い掛けないことを言われて、ちょっぴり戸惑う…。

「…いえ…普通のサラリーマンすけど…」

「あ、そうなんですか…失礼致しました。背もお高いですし、脚も長くて素敵でしたので…。とてもよくお似合いですよ」

店員が少し頬を赤らめて、鏡の中で微笑んだ。今まで、そんなことを言われたことがあるような、ないような…。だけど、どっちにしても悪い気はしない…。自分の容姿はどうでも良いのだけど、素敵とか言われてしまったら…やっぱり嬉しい。

「えへっそっすか~?ありがとうございますっ」

そう言いながらも、本当は三洲から言われたかったと心の奥底で、密かに思う真行寺であった…。
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