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緑色の風2 

緑色の風2


「何~、真行寺。お前『田舎暮らし』当たったんだって?」

軽く肩をポンと叩く。

社食で昼食を摂っていると、隣の部署の荻野が声を掛けてきた。荻野は真行寺と同期で、営業仲間である。

「何で知ってるんだよ?」

課長から言い渡されてから、然ほどまだ時間も経っていない筈なのに…。情報が速い。

「ウチの部署、その話で持ち切りだぜー。真行寺の彼女が見れるって」

噂でしか聞いたことのない、真行寺の綺麗な彼女…。早く神秘のベールを剥がしたいと、誰もが思っているようだ…。

「…何だよ、それっ?彼女、彼女って…」

「綺麗な子と付き合ってんだろー?勿体振んなよ。薬指に指輪なんかしちゃってさー…」

言いつつ…。何もない、自分の左手を見る。

「…俺も彼女欲しいなぁ。真行寺、誰か紹介しろよー」

「何で、そうなるんだよ?…それより、キツネうどん…冷めちまうぞ?」

「いいよ、別に…。俺、猫舌だしさ…。冷めた方がちょうどいいんだよ…。なぁ、彼女連れてくんだろ?」

「えっ…でも、まだ聞いてないから分かんねぇよ」

「大丈夫なんじゃねぇの?彼女だってさ、一週間会えなかったら寂しいだろ?付いて来るってー!」

真行寺の背中を、バシッと叩く。

「いってぇなぁ!もぉっ」

「彼女の写真、期待してるからさっ!頑張れよ!でも、良いなぁ…新婚生活みたいで。彼女の手料理食ってさぁ…そんでもって、夜は…ふふっラブラブだろ?羨ましいなぁ、この色男っ!」

もう一発、背中にお見舞いする。

「だーかーらっ!痛いってば!この話は、もうそんくらいで良いだろっ?早くうどん食えっ!昼休み終わっちまうぞ!」

真行寺もまだ、カレーライスを食べている途中だったのに、荻野の所為でカレーライスもすっかり冷めてしまった…。せっかく一人になって、色々考えるつもりでいたのに…。前回も橘の子供を預かることになった時、三洲をどう説得するか悩んだばかり。

「…はああああ」

冷めたカレーライスも、どこに入ったのか分からないまま、昼休みが終わってしまった。


~・~・~・~・~・~・~


「ただいま」

いつものことだが、真行寺の少し後に三洲が帰宅した。この時間帯、真行寺は夕飯の支度をしているので、そのままキッチンまで行く…。

「アラタさん、お帰り

身を少しだけ屈めて、三洲の頬にキスをする…。もう日課のようなものだ。

「…今日の夕飯、何?」

「今日は筍の炊き込みご飯だよ。あと、お刺身買ってきたから、これで一杯飲も冷酒が良いかな?」

「…あぁ、たまには良いかもな。じゃ、着替えてくるから…」

「うん

三洲が寝室へ着替えに行っている間に、真行寺はちょっぴりドキドキしながら、晩酌の準備を始める。昼間のアノ話を切り出そうと思ったからだ。程なくして、三洲がラフな服装に着替え、こちらに戻ってきた。椅子に腰を下ろすと、真行寺が刺身と冷酒をテーブルに運んで、自分も椅子に腰掛けた。

「アラタさん、どうぞ

「うん、ありがと」

真行寺が冷酒を注いでくれたので、三洲も真行寺のグラスに冷酒を注いだ。

「…ありがと

二人で労を労い、冷酒の小さなグラスを合わせた…。一口飲んで、話を切り出してみる。

「…ねぇ、アラタさん?纏めて有給休暇取れる?」

「…ん?纏めてって…何かあるのか?」

「…うん。実はね、ウチの会社の毎年恒例の行事…ってゆーか、企画ってゆーか…。この時期ね、田舎暮らしを体験してみよう!ってのがあるんだけど…」

「…何だそりゃ?」

「話せば長くなっちゃうから、ザックリ言うけど。ウチの会社の社長ね、田舎から出てきた人でさぁ。自分の原点だからって、自分の生まれ故郷を大事にしてるんだって」

「…へぇ。で、何で真行寺なんだ?」

「東京生まれの、東京育ちだから。田舎の良さってゆーか、そーゆーのを社長は伝えたいみたい。意味は違うけど、祠堂も山の中にあった学校だから、今まで丸っきり自然と縁がなかった訳じゃないけどさ…。特に若い人に体験してほしいんだって」

「…ふぅん。で?」

三洲は、小さなグラスの冷酒を飲み干す。纏めて有給休暇…。真行寺の言いたいことは、だいたい分かった。

「アラタさんも一緒に行って下さい!!」

真行寺は、テーブルに頭をゴン!とつけて、三洲様にお願いしたのだった。
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  • 2012.05.12 (Sat) 12:11 | まとめwoネタ速neo
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