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緑色の風9 

緑色の風9


「…息子さんがおられるんですね?」

「あぁ、息子と娘がな。娘も名古屋へ嫁に行っただよ。この家も今じゃ、俺と女房の二人だけになっちまったけどな?」

宮島が、どこか寂しげに呟き…更に続けた。

「まぁ、盆や正月になると孫を連れて、ここへ帰ってくるから。…やっぱり、こっちは気持ちが安らぐって倅が言ってたよ。故郷ってそう言う場所だよなぁ…」

故郷…。疲れた心を癒す場所…。

「俺、スローライフに興味があるっすよ。今はバリバリに働かなきゃならないけど、将来は…一番大切な人とのんびり暮らしたいっす」

真行寺の一番大切な人…それは勿論、今隣に座っている三洲しかいない…。

「この村にも、他所から来た人が何人かいるよ。ここに来て何か新しいことを始めたり、自分の元々の趣味に没頭したり…。静かだから、集中出来るって言ってたなぁ…。俺っちは、畑仕事ぐらいしかねぇけどな?あははは。あ、一つ不便なこたぁな、ここらには店がねぇことだ」

宮島の言葉に、ハッと気づく。確かに、言葉通り…コンビニすらなかった。ここにくる時、通ってきた商店街まで買い出しに行くことになるのかな?

「…くる時、商店街通ってきたっすけど、そこまで行くってことっすか?」

大事なことだから、聞いておく。

「おぅ、そうだよ。面倒だと思うけど、足りない物はだいたいそこで揃うからな」

そんなことも勿論“込み”の田舎暮らしなのだ。話ばかりしているのは良いが、肝心な家は何処にあるのだろう?真行寺がキリの良い所で聞いてみた。

「…あの、家って…どこなんすかね?」

「あ!そうだ、案内しなきゃだっけなぁ。話に夢中になっちまって、すまん、すまん。今、鍵を持ってくるで…」

そう言って、宮島は鍵を取りに行った。


~・~・~・~・~・~・~


二人が一週間借りる家は、宮島の家からも見える場所にあった。

「あそこの…ちょっと離れてる一軒家だよ」

宮島が指差す方を見ると、二人きりでは広すぎるくらいの平屋建てがある。遠くから見ても、そう古くなさそうな感じだ…。真行寺の車に乗って、その古民家へと移動した。

古民家に着くと、パンフレットの写真では感じなかった生活感を感じた。玄関付近に置かれたプランターには、三種類のビオラが植えられている。その隣には、蕾をたくさん持った薔薇の鉢植えが置いてあった。

「花が綺麗だねアラタさん

「そうだな」

「ウチの女房がね、あまりにも殺風景だからって植えてくれたんだよ。その薔薇も、もうじき咲くんじゃねぇかな?君らがいるうちに咲くと良いけどな」

「何色が咲くのかな?」

ちょっぴり、ワクワク

ぷくっとした蕾を見ると、白のような、ピンクのような…。それは咲いてからのお楽しみなのだ。

「あれは紫陽花だよ。咲くのは、まだちょっと先だけどな?紫陽花は土の鉄分が多いと、赤みを帯びるし、逆に少ないと青く色づくんだよ」

敷地の入口にある、株が大きくなった紫陽花を指差して言った。

「花の水やりとか、手入れは宮島さんが?」

「管理人だからなぁ…。女房と二人で手入れしに来てるよ。畑も何か作っておかないと駄目になっちまうから。今は小松菜とほうれん草とキャベツ、大根…トマトもあるけど、まだちょっと早いかな?青い物ばっかりだけど、収穫出来るから遠慮なく食ってくれよ?」

「有り難く頂戴いたします…」

真行寺より先に、三洲が丁寧に返事をした。子供同然に、大事に育ててくれた作物を頂くのだから…。

「後で大根でも、引っこ抜いてみるか?あはは!」

「あ!それ、すごくやってみたいっす!」

目を輝かせる真行寺…。ホントにコイツは田舎暮らしに憧れているんだと、思える瞬間だ…。そして鍵を開けて貰い、家の中へ入った。

「君らが今日こっちに来るってことだったから、昨日掃除しといたんだよ」

「そうっすか、ありがとうございますっ!」

障子を開けると、懐かしさを感じる畳の匂いが鼻を掠めた…。東京の自宅マンションの部屋は、フローリングのみ。畳の上を歩く感触は…やっぱり良い。

…日本人だから、だろうか?

「先日、畳も張替えたんだよ。丸河さんがここを買ってから、色々手を入れててな?築50年の家だけど、随分綺麗になったよ」

宮島は家のことを色々説明してくれた。
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  • 緑色の風9「…息子さんがおられるんですね?」「あぁ、息子と娘がな。娘も名古屋へ嫁に行っただよ。この家も今じゃ、俺と女房の二人だけになっちまったけどな?」宮島が、どこか寂しげに呟き…更に続けた。「まぁ、盆や正月になると孫を連れて、ここへ帰ってくるから。…...
  • 2012.06.10 (Sun) 06:01 | まとめwoネタ速neo
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