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緑色の風10 

緑色の風10


宮島に案内され、台所へ…。

「あ、冷蔵庫には食うもん入ってないで、買い出し行ってくれな?ビールは俺からの差し入れだ。若い衆だで、飲むだろ?ははっ」

冷蔵庫の扉を開けると、瓶ビールだけが入っていた。

「えっ、良いんすか?こんなに…」

「あぁ、遠慮すんなよ?この村に来てくれた感謝の気持ちだよ。俺は君らが来てくれたことが嬉しいんだ」

まるで、遠くにいる息子が帰ってきたかのように、心底喜んでいる宮島だった。二人には広すぎるくらいの家…。台所を後にして、別の部屋へ案内してくれた。

「寝る時は、ここの部屋を使えば良いよ。押し入れに布団が入ってるで…。いつも、この時期だけレンタルして貰ってるヤツだし、清潔だぞ?まぁ…、部屋がまだあるから、一部屋づつ使ってくれても構わんしな?」

「ありがとうございます。何から何まで…」

「良いんだよ。何かあったら、遠慮なく言ってくれや…。あ、そうだ。今夜、家へ来な?近所の寄り合いがあるんだけどよ。寄り合いっつっても、飲み食いして騒ぐだけなんだけどな?君らを紹介したいから」

「…はぁ」

「ジジィとババァしか、いねぇけどな?あはははっ!」

そう言って、宮島は陽気に笑った。そして三人は、外に出て畑の前に立つ。先程言っていた、大根を収穫してみようと。自分の人生の中で畑の土に触れるなんて、絶対ないと思っていたが…。貴重な体験だとすれば…これもきっと、真行寺のオカゲなのだと三洲は考えた。

「葉っぱの根元をしっかり持って…グッと引いて…ほら、抜けた。簡単だろー?」

宮島の説明の通りにやってみる…。真行寺は呆気なくクリア。収穫した大根を見て、

「見てっ!すっげ、デカイ!」

と、子供みたいに騒いでいる。
自分も負けてはいられないと、力を入れるが…抜けない。自分で自分に呆れる程に超非力…。こんなに力がなかったなんて…ある意味、ショック。そりゃ…真行寺は運動部の出身だし。大根を引っこ抜くことなんて、朝飯前だろう…。とても簡単に見えたのに。コツがあるのか?

「…ぅーん」

もう一度、力一杯引いてみる。

「新君、もっと踏ん張らにゃぁダメだよ」

宮島に言われて、更に力一杯引っ張る。

「く~~~……うわっ!」

漸く引っこ抜けたが、抜けた拍子にバランスを崩して尻餅をついた。それを見ていた真行寺と宮島はクスクスと笑う…。いつも装いに長けている三洲が尻餅をつき、キョトンとしている。

…何だか、カッコ悪いけど…可愛い

駆け寄り、手を取って、ぎゅ~っと抱きしめたい…。でも、宮島の目もあるし、ここはジッと我慢する。

「大丈夫?アラタさん」

手を差し延べると、その手に掴まり立ち上がった。

「あぁ、ありがとう」

「…ん?」

穏やかな風に乗って、上品で爽やかな甘い香りが鼻を掠める…。その出所を知りたくて、三洲の髪をくんくんと嗅いでみた。だけど、違う…。確かに、三洲もいい匂いなのだが、それとは別の香り。変な行動を取る真行寺に、三洲は眉を寄せる。

「…なんだよ?」

「何か、フワッといい匂いがするんだけど…、何の匂いかなぁ?」

言われてみれば…何かが香る。周りをキョロキョロ見渡しても、何だか分からない。すると、宮島が声を掛けてきた。

「どうかしたかい?」

「…これ、何の匂いですか?」

都会の街中では有り得ない香り…。

「…あ~、これは藤の花の匂いだよ。ほら、あそこに咲いてるだろ?」

宮島が指差す方を見ると、家の裏山の木々に紛れて、薄紫の花が咲いているのが目に入る。

「ここまで匂いが届くんですね」

花の香りだと分かる程、空気が澄んでいる…ということ。この村の人が穏やかなのは、そういう所為もあるのかも知れない…。

「里山には、色んな花があるんだよ。そこにあるのは、ニワゼキショウで…これはオオイヌノフグリ」

「俺、見たことあるよ?実家の庭の片隅に咲いてた。人間と一緒で、ちゃんとした名前があるっすね…。知らなかった」

「可愛い花を咲かすのに、雑草って一括りするのもなぁ…。春が来る度、草花でそこら辺が賑わうんだ。偉いよなぁ、時期が来りゃあ勝手に咲くんだから…」

道端にも、タンポポの黄色とクローバーの白色が所々にある。葉っぱが刺々したアザミも、時折吹く優しい風にその姿を揺らしていた…。
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  • 緑色の風10宮島に案内され、台所へ…。「あ、冷蔵庫には食うもん入ってないで、買い出し行ってくれな?ビールは俺からの差し入れだ。若い衆だで、飲むだろ?ははっ」冷蔵庫の扉を開けると、瓶ビールだけが入っていた。「えっ、良いんすか?こんなに…」「あぁ、遠慮すんな...
  • 2012.06.18 (Mon) 20:03 | まとめwoネタ速neo
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