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緑色の風14 

緑色の風14


時刻も22時を回った所で、寄り合いもお開きになった。明後日は天気が良さそうということで、海野と山菜採りの約束をした。

「今日はご馳走様でした」

「すっげ、楽しかったっす!」

「…だいぶ飲んでたみたいだけど、大丈夫?三洲君。ほっぺが林檎みたいよ?」

“飲んでいた”というより…。“飲まされた”が、正しいと言えよう…。

「…大丈夫です」

「ごめんなさいねぇ…。お父さんたら、あなた達を気に入っちゃったみたいで…」

息子や娘が遠くにいるのだから、無理もないだろう…。少しだけでも、寂しい気持ちが癒えたのなら、それはそれで良かったと思う。宮島は、ちょっぴり飲み過ぎて寝てしまった為、美智子が玄関先まで見送ってくれた。

「…もうじき5月なのに、冷えるわね。風邪ひくといけないから、今夜は温かくして寝てね?」

「はい、ありがとうございますっ。遅くまで、すみませんでした」

「いいえ~。あ、そうだ!家の電話番号教えておくわね。何かあったら連絡してね?」

美智子から、電話番号を書いたメモ紙を渡された。

「何かあった時は、電話させて貰います…。それじゃあ、おやすみなさいですっ」

「おやすみなさい」

「おやすみなさ~い、気をつけてね」

二人は宮島家を後にして、来た道をまた戻って行く…。田舎の所為か…街灯が少なく、夜道が更に暗く見える。

「…街灯、少なっ!」

昼間は全く、気づかなかった。まだ田植え前の、水を張った田んぼに落ちたら大変なので、少し酔っている三洲の肩を、しっかりと抱き寄せる…。明日は雨だと言っていたが、なるほど。星は雲に覆われて、ひとつも見えなかった。

「…歩くの、ツラくない?」

「…大丈夫だよ…真行寺が支えてくれてるからさ…」

三洲の腕が、さりげなく真行寺の腰に絡みついた…。

「…星も出てないしさぁ、明日やっぱ雨だね?明日、何しよっか?ねぇ、アラタさん」

「明日になったら、決めれば良いだろ…」

都会とは違って…。ここは、何倍も時間がゆっくりと流れているよう…。

「…それもそうだね

しん…と、静まり返った夜道に二人の足音だけが聞こえていた。15分程掛かって、漸く古民家に辿り着き、部屋の電気を点けた。

「たっだいま~」

障子を開けると、畳の藺草の香りが鼻を掠める。

「…今日は何か疲れたよ…」

三洲は畳に寝転がった。初対面の人達ばかりだったから、必要以上に神経を遣ったようだ。

「そうだね…。アラタさん、宮島さんにトッ捕まってたもんね?ふふっ今、布団敷いてあげるから待ってて

襖を開けると、隣の部屋に続いている。真行寺は押し入れから、布団を出した。

「…お前が、ちゃんと捕まえててくれないからだ…」

ちょっぴり、拗ねてみる…。

「…うーん。でもさぁ、俺も海野さんに捕まっちゃってたからさぁ…」

敷き布団に、シーツを丁寧に掛けながら、言い訳じみた言葉を並べた。里の春の夜は、まだまだ冷えるので毛布も用意して…。寝床の支度も出来たので、三洲に声を掛けた。

「アラタさん、布団敷いたよ…って、ダメだよ!こんなとこで寝ちゃあ…。風邪ひくっつーの」

どおりで、返事が返ってこない訳だ…。

「…んー?…」

「ほら、着替えなきゃ…。アラタさん、パジャマ持ってきた?」

「…真行寺…水…」

「…水?…水飲みたいの?」

「…喉…渇いた」

結構、飲まされたから…。

「持ってくるから、起きて?」

真行寺は台所へ行き、冷蔵庫に冷やしておいた、ミネラルウォーターをトポトポ…と、グラスに注いだ。

「…ん?アラタさん?」

背中から抱きつかれて、ちょっとビックリした。抜き足差し足できたみたいに、足音もしなかったから…。

「アラタさん…水…」

前に回された三洲の手の甲に、冷たいグラスを当てた。

「…うん…ありがと」

三洲はグラスを受け取り、水をコクッ…コクッ…と一気に飲んだ。

「…あ~…美味かった…」

グラスを置き、今度は前から…もう一度、真行寺に抱きついた。

「真行寺…もう寝よう…」

酔っている所為なのか、とても気怠そうで…。だけど、とても愛しくて…。三洲の体を、ぎゅっ…と抱きしめた。
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