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真三洲のプチ小説 

『さよなら、夏の日』


二人で部屋のベランダから、街を眺めていた。

街を赤く染める夕陽がとても綺麗…。

夏が徐々に遠退いて、秋が近づいてくる足音が聴こえる…。

「最近、だいぶ涼しくなったよね?吹いてくる風が違う…」

頬を撫でる風が冷たい…。

「…そうだな、今年の夏も暑かったけど…残りも何とか、乗り切れそうだな」

この夏の思い出と言えば…。

三洲の実家へ泊まりに行ったこと。夏祭りも浴衣を着せて貰って、二人で街を歩いたっけ…。

藍色の浴衣に身を包んだ三洲は、とても色っぽくて…。浴衣の衿元から伸びる、白い首筋…思い出すだけで堪らない。

「来年はさぁ…、お祭りも行きたいけど、海水浴も行きたいな~。あ、プールでも良いけど

「気が早いな。もう、来年の夏の話か?ふふっ」

「だって、アラタさんと一緒にいると…色々したくなっちゃうんだよね~ふふっ

家の中にいて、イチャイチャするのも良いけれど…。色んな場所で、色んな思い出を作りたい。その時にしか作れない思い出を…。

「…でも、海水浴は嫌だな」

「えっ?なんでぇ~!?一緒に泳ごうよ~」

「海パン持ってない」

「いいじゃん、買えば。あっ!俺が選んであげるアラタさんにピッタリなの。ふふっ

「遠慮しとくよ。どうせ、へんちくりんなの選ぶんだろ?それに、日焼けしたくないんだよ」

「大丈夫だよ~。カッコイイの選んであげるあとさ、日焼け止めも買って~、俺が隅から隅まで丁寧に塗ってあげるぅ~へへっ

「…鼻の下伸ばして言うなっ…だらしない。その手つきも何かイヤラシイな…」

「イヤらしくないってば~」

今更、言うことではないが…真行寺は三洲にベタ惚れなのだ。だからいつだって、触れていたい。勿論、三洲も同じ気持ちを抱いている…。
好きだから、一緒にいれるし…愛してるから、一緒にいたいと思っている…。

夜の帳が降りる頃、遠くの空に上がる夏の花火…。花が咲いた後、遅れて聴こえてくる「どん!」という音…。

「あっ、ねぇ!あっちで花火が上がってるよ!」

最初に見つけたのは、真行寺だった。真行寺が指をさす方を見ると、東京の空に大輪の花が咲いている…。

「…隅田川の花火か?」

「…あ、そうかも!そう言えば、会社の人が言ってたっけ!」

日々の生活に追われていると、多少忘れることだってあったりするけど…。

「ああ…俺もそう言えば、浴衣着てる人とすれ違ったな…」

反対の方向へ歩いて行く、浴衣姿のカップルや家族連れが、ワイワイと楽しそうに…。

「…どうせなら、近くで見たかったね?」

遠くに見える花火を見ながら、真行寺が呟いた。

「近くで見るのもいいけどさ…遠くで見るのも悪くないよ…」

真行寺の肩に頭を、ちょこんと乗せて…、

「…こうして見れるだろ?」

「…うんそうだねふふっ

肩に掛かる心地好い重み…。そっと三洲の肩に腕を回し、抱き寄せた。そして、暫くずっとそのままで…東京の空に咲く花を、ただ黙って見つめていた。

儚く消える、夏の花火…。

「…ねぇ、腹減んない?」

せっかく、甘い雰囲気に浸っているのに。ホント、色気より食い気の真行寺…。

「…減ってるさ。一日働いて来たんだから」

花火をずっと見ていたい気もするが、キリがないと言えばキリがない…。

「俺、夕飯の支度するよ」

真行寺はそう言って、部屋の中へ戻って行った。取り残された三洲は、暫く一人で花火を見ていたが、何だか虚しくなり部屋の中に入った。

「あれ?アラタさん、花火もういいの?」

キッチンにいた真行寺が声を掛けると、

「一人で見たって、しょうがないだろ…。今日の夕飯、何?」

三洲が真行寺の手元を覗く。

「今日はね~、豚の生姜焼きで~すあ、ねぇ、アラタさん…これっ、キャベツ千切りにして」

「えっ?」

まな板の上に、洗ったキャベツが3枚置いてあった。よりによって、キャベツの千切りとは…。

あまり得意ではない…。キャベツの千切りなんて。

「何だよ、ベビーリーフとかにすればいいのに」

面倒くさくて、ついそんなことを言ってしまう三洲。

「豚の生姜焼きには、キャベツの千切りでしょ~?あ、切ったらお皿に盛りつけといてね

「…分かったよ…。でも、あんまり細く切れないからな」

「うん、いいよ。多少歯ごたえある方がいいしさ」

真行寺は、そう言うけれど…。見た目とか大事じゃないのか?料理は目で楽しんだりもするのに。

…まあ、最終的に食えれば関係ないのか?

三洲はそんなことを思いながら、ぎこちない手つきでキャベツの千切りをし、皿へ盛りつけた。



二人きりの食事を楽しんでから…もう一度、ベランダに出てみた。遠くの空はいつしか、いつもの空に戻り花火も、その音も消えて静まり返る…。

「…花火、終わっちゃったね」

真行寺がちょっぴり寂しげに呟く。今の時代…花火は秋や冬でも見ることが可能なのかも知れないが…「花火」と言えば、やはり夏の風物詩…。夏の花火と共に、夏も去って行く。

「…日本は四季があって良いよな…。その季節によって人の目を楽しませてくれるだろ?花だったり、景色だったり…。不思議と癒される…そう思わないか?」

「うん、そうだね

三洲を抱き寄せて、髪にキスを埋める…。季節を問わず三洲を癒してくれるのは…他の誰でもない、真行寺だけ。

「…来年は浴衣着て、もっと近くで見ようか」

「うん、賛成ふふっ

「…何か、やっぱり少し冷えるな…」

真行寺の胸に顔を埋めた。

「…もうすぐ秋だよね。秋は食べ物が美味しいから大好き

「…食いしん坊」

「でも~、冬はもっと好き

冬は大好きな貴方と、ピッタリと寄り添えるから…。

だけど…、今は秋の訪れを静かに待ちたい。賑やかだった夏を見送って…。

さよなら、夏の日…。

遠くで夏の思い出たちが、手を振っていた…。



…オシマイ。o(^-^)o
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