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真三洲のプチ小説 

『ある春の一日』(前編)


桜の花が咲き始めたこの時期、雨が多い…。花冷えの所為か…春と言えど、まだ寒かったりする四月のある日。三洲と真行寺の住むマンションに、小さなお客様を招くことになった…。

「真行寺君、お願い!」

そう願い出たのは、真行寺の勤める会社の先輩社員の橘だ。

「…えっ…でも、俺…そーゆーの、やったことないし…」

「今度の土曜日なんだけど。夜には迎えに行くから…」

真行寺にとっての、土曜日や日曜日、そして祝日…。ザックリ言えば『休日』なのだが。仕事のある平日よりも、大好きな三洲と一日中一緒にいられる…。ただ、それだけなのだが、真行寺にとっては大事な大事な時間なのだ。

「…でもぉ」

「妻の妹に頼もうと思ったんだけど…、家族旅行で温泉へ行くらしいんだよ…。だからって、一人で留守番させる訳にもいかないし…。ウチの娘はまだ小学生だから…」

橘は今週末に、生まれ故郷である山梨へ父の法事の為に里帰りをする。橘は長男の為…立場上、妻も同伴で出掛けるのだが、法事の席に小さな子供を連れて行くのは、何だか可哀相に思えて…。

悩んでいた時、ふと思い出した。

橘の一人娘の璃緒はこの春、小学二年生に進級したのだが。小学校に上がる前から、真行寺のファンだった。父親を差し置いて、

『あのお兄ちゃんのお嫁さんになる!』

と、ずっと言っていた。父親の橘は、かなりショックだったようだが…。今となれば、絶好のチャンス!と思い…娘に話をしてみたところ、予想以上に喜んで…。

『あのおにいちゃんが、あそんでくれるの?りお、うれしいー!』

その言葉が、何だか寂しくて…、もう一度言ってみる。

『パパとママは山梨までお出掛けするけど、それでも璃緒は大丈夫?』

『うん!だいじょうぶだよ?だって、おにいちゃんがいるから』

瞳をキラキラさせて応える姿を見て、これまた…ショック。いつか訪れてしまう、この子が嫁いで行く日…。その時、自分は耐えられるのか…今からとても不安なのである。

それは、どうとしても。

橘は真行寺の承諾もなく、勝手に娘と約束をしてしまったから、真行寺には逃げ道がないのだ。もう、半ば強制的みたいなもの…。

「璃緒と約束しちゃったんだよ…。真行寺君が遊んでくれるって…だから、頼むっ!」

「…そりゃないっすよぉ…橘さん。マジで俺、子供のお守りしたことないのに…勝手に約束取り付けないで下さいよぉ」

「済まない!このお礼は、ちゃんとさせてもらうから…。あ!そうだ。真行寺君、彼女いたよね?もし一人で大変なら、彼女の手を貸してもらってさぁ…」

…勝手なことばかり言って…。彼女、彼女って言ってるけど…俺が付き合ってるのは、女じゃなくて男だっつーの!

真行寺の心の声は、橘に届くこともなく…結局、橘の一人娘の面倒をみることになってしまったのだ。

「…アラタさんに何て言おう」

重い足取りで、トボトボと歩く…。

『子供同士で良いんじゃないか?あははっ』

三洲がケラケラ笑い転げる姿が浮かんだり…。

『…何で俺まで面倒見なくちゃいけないんだよ?』

「…やっぱ、怒られちゃうかな?」

不機嫌になって…それが原因で、エッチがまたオアズケになったりして…?

「…それは嫌!」

会社の帰り道、色々と妄想しているうちに、自宅マンションに着いてしまった…。


~・~・~・~・~・~・~


「…ねぇ、アラタさん…話があるんだけど…」

「んー?なんだ?」

夕食を終えて、マッタリとした時間…。三洲の機嫌は悪くなさそうだが。

「…あのさぁ、その…」

どう話そうかと、ちょっぴり迷ってモジモジしていると…。三洲が訝し気な表情をして、

「…なんだよ?今日はしないぞっ」

「あ、やっ…そうじゃなくて…」

勘違いだけど、何だかそれはそれで…カナシイ。

「…じゃ、何なんだよ?」

あれ?もしかして、不機嫌になっちゃったかな…?コワイな…。コワイよ~!

でも、このままではいられないので。真行寺は恐る恐る話始めた。

「…あのね、ホントになっちゃったんだよ…お守り」

「…はぁ?…お守り?」

「前さぁ…大阪へ出張したじゃん?その時、同行した橘さんに子供のお守りを頼まれちゃった…」

「…ふふっ…あははっ!」

案の定、三洲は腹を抱えて笑い転げた。

「…あ!ひどっ!そんなに笑わなくたっていいじゃん!」

「あははっ!子供同士で良いじゃないか」

「俺、子供じゃないもんっ!…ヒドイよ、橘さん。冗談だと思ってたのに…。勝手に子供と約束しちゃうんだもん…。順序が逆じゃん…」

「…でも、引き受けてきたんだろ?」

「…うん。でもさぁ、俺…どうしていいか分かんないんだよね…。子供は好きだけど…男の子ならまだしも…女の子だから、どう扱って良いのか…」

真行寺らしくなく、かなり悩んでしまっている様子…。三洲も真行寺も一人っ子なので、その辺はちょっぴり謎。

「…年の離れた妹くらいで、考えれば良いんじゃないか?どっか連れて行ってあげるとかさ…。遊園地とかどうだ?」

「…うん、だけど…まだ寒いし、風邪ひいちゃったら大変だし…」

人様のお嬢さんだから。

「…じゃあ、どうするんだよ?」

「…ここへ連れて来ちゃダメかな?」

「…ここに?じゃあ、俺はどこか出掛けた方が良いだろ?」

「えっ!?ヤダよ!アラタさんも手伝ってよっ!俺を一人にしないで!」

「…何で俺も手伝わなきゃいけないんだよっ!?」


…なんて、やり取りがあって。

三洲をどうにか説得して、運命の(?)土曜日を迎えたのだった。三洲の今日のご機嫌は…正直、とても微妙なところ。朝早くに橘と待ち合わせなので、真行寺は自宅マンション近くの公園まで急いだ。公園まで行くと、一台のシルバーのミニバンが停まっていた。一目で橘の車と分かり、駆け寄って運転席のガラスをコンコンとノックすると、橘が気づいて車から降りてきた。

「おはようございますっ」

「おはよう。済まないね…朝早く。真行寺君ちって、ここから近いんだよな?」

「あ…はい。あのマンションっす」

真行寺が指差す方を見て、橘はちょっとビックリ…。

「…へぇ。良いとこに住んでるんだな?家賃も結構するんじゃないか?」

「…あー…でも、一人暮らしじゃないんで…へへっ

「…あ!もしかして、彼女と住んでるのか?」

「え?あ、やぁ…高校ん時の先輩と…」

「…先輩って、女の先輩?」

橘は興味津々…。

「…まさか~。男っすよ~。はははっ」

その人が実は恋人です、とは口が裂けても言えない。

「…なーんだぁ…。せっかく、会って見たかったのになぁ…」

と、話が弾んできた時。橘の妻が娘を連れて車から降りてきた。

「おはようございます。無理矢理お願いしてしまって、どうもすみません」

「おはようございますっ…。そんな、無理矢理だなんて…そんなことないっすよ」

…ホントはかなり無理矢理だったけど…敢えて言いませんが。

「…パパ、そろそろ時間が…」

そう言われて、腕時計に目をやる。

「…あぁ、そうだな。それじゃあ真行寺君、娘をよろしく頼むよ…。さ、璃緒…兼満お兄ちゃんにご挨拶して」

母親の影に隠れ、恥ずかしそうに頬を赤く染めて、こちらを見ていたが…。

「…おはようございます。たちばなりおです…よろしくおねがいします」

ちゃんと言えた。

「璃緒ちゃん、エライね!今日はお兄ちゃんと楽しく遊ぼうね!」

「うん!」

真行寺の笑顔を見て、璃緒の緊張も解れたのか…満面の笑みで応えた。

「パパとママお出掛けしてくるから…良い子にしててね?…夕方には迎えに来ますから。娘をよろしくお願いします」

「はい。お預かりします…。気をつけて行って来て下さい」

「じゃ、真行寺君。頼んだよ。璃緒、お兄ちゃんを困らせちゃダメだからね?じゃ、行ってくるからね」

「はーい!パパ、ママ、いってらっしゃーい!」

愛娘の頭を撫でて車に乗り込み、窓を開けてもう一度手を振った。

「じゃ、夕方に迎えに来るから」

「いってらっしゃーい」

真行寺と璃緒は手を振って、橘夫妻を見送り、車が見えなくなってから璃緒に話し掛けた。

「さ。璃緒ちゃん、お兄ちゃんちへ行こっか」

「うん!」

璃緒と手を繋ぎ、歩き出すと。

「かねみつおにいちゃんのて、おっきくて、あったかいね!」

「うん、よく言われるんだ」

三洲からも、よく言われたりしている…。いつも冷たい手をしているから…。

『お前の手…温かいな…』

余計にそう思うのだろうか…?


~・~・~・~・~・~・~


小さな璃緒の手を引き、玄関の扉を開けて、

「ただいまー」

「…おかえり」

三洲がリビングから顔を出すと、璃緒は真行寺の後ろにササッと隠れて…そして、チラッと覗いた。

「…かねみつおにいちゃん、あのおねえちゃん…だれ?」

「…え?お姉ちゃん?…あはっ、あの人はね…お姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんだよ?アラタお兄ちゃん」

「…あらたおにいちゃん?」

「そっ。仲良くしてね」

…“アラタお兄ちゃん”なんて、すっげ新鮮でも、この子がいる間はどさくさ紛れで言っても、許して貰えそうだよな…。

なんてことを考えながら、璃緒を連れてリビングへ…。

「アラタさん、璃緒ちゃん連れてきたよ」

「璃緒ちゃん、おはよう。よく来たね」

三洲は、とびきりの笑顔で璃緒を迎えた。

「おはようございます。たちばなりおです。よろしくおねがいします」

先程と同様、ちゃんと言えた。

「お利口さんだね。こっちにおいで」

「うん!」

璃緒は三洲の隣にチョコンと座って、

「あらたおにいちゃんて、きれいだね。りおね、おねえちゃんかとおもっちゃった!」

この光景を見た真行寺は、何だか羨ましかった…。こっちにおいでとか言われてるしー。小さい子供って良いなぁ…。

「璃緒ちゃんは、今何年生?」

「にねんせいになったの」

「…ふぅん。あのね、兼満お兄ちゃんは、あんなに大きい体して子供みたいなんだよ?ふふっ」

「…ちょっ、アラタさんっ!」

もぉっ、こんなちっちゃい子に変なこと吹き込まないでよっっ!それに、俺は子供じゃないって!

真行寺の心の叫びは、届きはしないけど…。でも、三洲と璃緒が楽しそうにしているので、まぁ…一安心と言ったところだろう。真行寺は、橘から預かったトートバッグの中を覗いてみると、小さなぬいぐるみなどが入っていた。

「璃緒ちゃん、いつもこれで遊んでるの?」

真行寺は、トートバッグの中のぬいぐるみを一つ取り出して聞いてみた。

「うん、そうだよ。このクマさんはね、いつも、りおといっしょにねてるの」

「そっかぁ…可愛いね」

「パパがね、おたんじょうびにかってくれたの」

璃緒はトートバッグの中から、別のぬいぐるみを取り出して、

「これ、かねみつおにいちゃんにかしてあげる。あらたおにいちゃんは…こっち」

二人の手にそれぞれ、ぬいぐるみを渡して。

「あそぼっ

三洲には『猫』、真行寺には『犬』…何か、そのまま…といった感じだが。嬉しそうに微笑む、璃緒の気持ちを踏みにじらないように…。ぬいぐるみで遊んだことのない二人は、どうして良いものか分からなかったけれど…。

「ねこちゃんは、おはなみした?」

「まだだニャー」

三洲は猫になったつもりで応える。

「わんちゃんは?」

「俺もまだだワン!クマさんは?」

「あした、パパとママといくんだぁ」

桜も今がちょうど見頃…。三洲と真行寺も時間があれば、また花見をしたいと思っていた。
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