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真三洲のプチ小説 

『ある春の一日』(後編)


璃緒が二人の自宅マンションへ遊びに来て、間もなく時計は正午を差そうとしていた。

「璃緒ちゃん、お腹空いた?」

真行寺が話し掛けると、璃緒は恥ずかしがらず、無邪気な女の子のままで、

「うん、おなかペコペコ~」

「じゃあ、おにいちゃんが今からオムライス作ってあげるね

「わ~い!りおね、オムライスだいすき~!」

璃緒は大喜びだ。

「アラタお兄ちゃんと遊んでてね?」

「かねみつおにいちゃん、りおもてつだう~」

「ありがと。でも、璃緒ちゃんはお客様だからね。ゆっくりしてて良いんだよ?」

「りおも、おてつだいしたいよ~」

「真行寺、少しくらいなら良いんじゃないか?」

璃緒に泣かれても困るし…。手伝わせてあげれば、機嫌を悪くすることもないだろうと思い、三洲が提案した。

「…うーん…じゃあ、ちょっとだけだよ?」

「うん!」

璃緒はニコニコしながら、真行寺の後をチョコチョコと付いてキッチンへ…。二人が仲良くしているのを見ていると…。やっぱり、何だか面白くない。手伝いをさせてやれと言ったのは、自分だけど…。

相手は小学生なのに…。

真行寺は何だかんだ言っても、ちゃんと子供の面倒を見れているじゃないか…。

真行寺が父親になったとしたら…?あんな感じなのか…?なんて、考えたくもないことを考えていたら…ちょっぴり寂しい気持ちになった。

「じゃあ、これ洗ってくれる?」

サラダにする野菜を璃緒の小さな手に渡すと、

「うん。いいよ!りおね、おうちでも、ママのおてつだいしてるのー」

「そっかぁ。璃緒ちゃん、エライね!きっと良いお嫁さんになるよ」

ものの弾みで、うっかり出てしまった言葉…。

「りおね、かねみつおにいちゃんのおよめさんになりた~い!」

「…えっ!?」

大きな瞳をキラキラさせて、尚も続ける…。

「でもね、あらたおにいちゃんのおよめさんにもなりたいの~」

…むむむっ!アラタさんのお嫁さんになりたいだって!?

それは冗談抜きで、絶対!絶対嫌だから…。子供相手にムキになってるかも知れないけど、ここは抑えて、抑えて…。

「…でもさぁ、璃緒ちゃんが大人になった時、お兄ちゃん達はもうオジサンだよ?」

世間で、いくら年の差婚が流行っていても…ちょっと、キツイだろう。

「そうそう。オジサンだよ…ふふっ」

リビングのソファーに、座っていた三洲も口を挟んだ。

その頃の璃緒はきっと、素敵な彼氏を見つけて…。多分、三洲と真行寺のことも忘れているかも知れない。それくらい、素敵な恋をしてほしいのだ…。

「さ。璃緒ちゃん、サラダをこのお皿に盛り付けて」

「うん!」

小さめの器に野菜を盛り、プチトマトを添えて…出来上がり。

「かねみつおにいちゃん、これでいい?」

「うん、良いよ!璃緒ちゃん、盛り付け上手!流石、女の子だね」

チキンライスを作りながら、璃緒を褒めてあげた。真行寺が料理する姿を見ていた璃緒は、

「ママにも、いつもほめられるんだ。…かねみつおにいちゃん、おりょうりすきなの?すごくじょうずだね?」

手際の良さとか、フライパンの振り方とか…。璃緒はその辺をマジマジと見ていた。

「うん、そうだね。作るのも好きだけどね、おにいちゃんは食べる方が好きふふっ料理はさぁ、いつも作ってれば、上手くなると思うよ?」

「りおも、じょうずにできるようになるかなぁ…?」

「出来るよぉ、大丈夫!…さ、出来た。あとは卵だな…」

まずは、チキンライスを皿に盛り付けて…。卵を焼いたら、後乗せする。

「璃緒ちゃん、お手伝いありがと。もうじき出来るから、アラタお兄ちゃんと待ってて」

「は~い」

璃緒は素直に返事をして、リビングのソファーで寛ぐ、三洲の隣にちょこんと座る。

「あらたおにいちゃん、もうちょっとだって!」

「そう、楽しみだね。兼満お兄ちゃんの料理…美味しいよ?」

真行寺には内緒で、子供相手にちょっぴり惚気る…。

「あらたおにいちゃんは、おりょうりしないの?」

「…うん。俺は苦手だから…ふふっ」

「ふぅん…なんか、かねみつおにいちゃんて、あらたおにいちゃんのおよめさんみたい…」

「え?どうして?」

「だって、ごはんつくってるからー。」

「…璃緒ちゃん、面白いこと言うね?男の人だって、料理作るよ?あ。兼満お兄ちゃんはね、食いしん坊なんだよ…ふふっ」

キッチンに目をやると、三人分のオムライスを一生懸命に作っている真行寺…。三洲と璃緒の会話など聞こえる筈もない。

それにしても。

真行寺が嫁さん?嫁さんにしては、デカ過ぎやしないか…?考えてみたら、可笑しくなった。

その時、キッチンから真行寺の声…。

「オムライス出来たよ~食べよっ

「は~い」

真っ先に璃緒が、テーブルに駆け寄った。

「わ~!おいしそう!おみせのみたい!」

卵が半熟なフワとろのオムライスを見て、璃緒は目を丸くして、再び喜ぶ。そして、三人で食卓を囲んだ。

「かねみつおにいちゃんのオムライス、すごいおっきいね?」

璃緒が、三人のオムライスを見比べた。大まかに言えば、大・中・小、という感じ。先程、三洲が言っていたことを思い出して…。

「…くいしんぼう?」

「そうそう、お兄ちゃんはね、体が大きいからちょっとじゃ足りないんだよ~」

と、言い訳じみた言葉を並べると、正面に座っている三洲が、クククッと笑っていた。

「…もぉっ、何笑ってんの?アラタさん、また余計なこと言ったんでしょっ?」

「別に~?…ふふっ」

好きだから、虐めたくなる…。ちょっぴりムキになる、君の顔が見たくて…。

「…ねぇ、たべてもい~い?」

璃緒は二人の顔をチラチラと窺いながら、スプーンを持って待っていた。一瞬、キョトンとするも…。

「…あ。ゴメン、ゴメン。食べよっ冷めないうちに」

真行寺が言うと、璃緒はニッコリと笑い、

「いただきまーす」

三洲以外の人に、ご馳走するのは初めて…。璃緒の反応が気になる。相手は子供だから、素直に感じたままを言葉にするのだろう…。

「かねみつおにいちゃん、すごくおいしいよ!」

「マジで!?良かった~」

美味しそうに頬張る璃緒に一安心。三人で楽しく昼食を摂った。


~・~・~・~・~・~・~


「…何か、風がスゴくね?」

オマケに雨も降りそうで…。さっきから風が、ひゅー…と音をたてている…。雲が厚くなり、天気もどうやら下り坂のようだ。

「一雨来そうだよ?」

窓の外を見て、真行寺が言う。時刻は16時を廻った。

「…パパとママ、はやくかえってこないかな…。りお、ねむくなってきちゃった…。ねてもいい?」

「…いいよ」

三人でいる時間にも、ちょっぴり飽きてきたのか?璃緒は、三洲の膝を枕にして目を閉じる…。

「…あ。良いんだ、良いんだー。俺もアラタさんの膝枕で寝たい~

三洲の隣に腰掛けて、真行寺もおねだりをしてみるけれど…。ジロリと睨まれた。何をしても許される璃緒が羨ましい…。三洲に、ちょぴっとだけでも甘えたいのに…。だけど、だけど!

「お前は頭が重たいからダ~メ」

予想通りの返事…。

「…もぉっ、ケチっ…わっ!」

ふて腐れる間もなく、頭を引き寄せられ…チュッとキスをされた。口唇が離れると、

「…お前はこっちの方が良いだろ?」

さっきとは打って変わった、三洲の優しい笑顔と声。三洲の膝枕で寝ている璃緒に、聞こえないくらいの小さな声で囁いた…。真行寺としては、アッチもコッチも魅力的!いつか絶対、三洲に膝枕してもらうのだ!

真行寺の心の叫びである。

そして、東京に雨が降り出した頃。真行寺の携帯が鳴った。勿論、璃緒の父親、橘からの着信だ。あと10分程で、朝待ち合わせした公園に着くという電話だった。天気も悪いので、まだ17時半を廻ったところだが辺りはもう薄暗い。

「…璃緒ちゃん、もうじきパパが来るから起きて」

可愛い顔をして、眠っている璃緒を起こすのは可哀相だけど…小さな体をそっと揺らすと、ゆっくりと目を覚ました。

「良く眠れた?もうじきパパ来るから、公園まで行こっか」

「…パパとママ、もうすぐくるの?」

目を擦りながら、起き上がった。

「今、電話来たからね。兼満お兄ちゃんと公園まで行こっか?」

璃緒の頭を撫でながら、三洲が言うと。

「…あらたおにいちゃんは?いかないの?」

「うん、お兄ちゃんは留守番してなきゃだからね?」

「…えーっ、りお、つまんなぁい…」

「兼満も、つまんな~いふふっ

横にいた真行寺は、璃緒の真似をして可愛コぶってみた。

「…何で、お前まで言うんだよ?」

不機嫌そうな三洲の顔を見て、璃緒は不思議そうな顔をする…。

結局。三洲も真行寺と一緒に璃緒を見送る為、公園まで付き合うことに…。雨と風の中、公園まで行くと、グッドタイミングで橘のミニバンが到着した。

「あ!パパのくるまだ!」

「璃緒ちゃん、ちょうど良かったね?」

「うん!」

璃緒は、ニコニコしながら応える。やっぱり、何だかんだ言ってもパパが好きなのだ。橘が車から降りると、途端に駆け寄って行った。

「パパーッ!」

「璃緒、ただいま。良い子にしてたか?」

「うん!いいこにしてたよ!」

「そっかぁ、エライな、璃緒は…。真行寺君、今日はありがとう。すごく助かったよ」

「いえいえ。橘さん、お疲れ様っす。あ、紹介します。一緒に住んでるアラタさんっす」

「初めまして、三洲です。真行寺がお世話になっています」

三洲は軽く会釈をした。少し暗がりではあるが、かなりの美貌に橘は、ちょっぴり緊張気味に自己紹介をする。

「あ、橘です。突然、娘を預けてしまって…申し訳ありませんでした。ゆっくり出来なかったでしょう…?」

「いえ…。楽しかったですよ。素直な良いお子さんですね」

「あぁ、ありがとうございます」

「ねぇ、パパ?」

「ん?何?」

「かねみつおにいちゃんがね、おひるにオムライスつくってくれたの。すごくおいしかったよー」

「へぇ?そうなんだ。良かったな、璃緒。パパも食べてみたいな…あはは」

「パパも、こんどつくってもらえばいいじゃん」

「そうだね、璃緒」

冗談にしても、実に勝手な親子である…。

「…あ、そうだ。真行寺君、これお土産」

橘は後部座席から、紙袋を取り出して、真行寺に手渡した。

「…あ。ありがとうございます…。あーっ!これ、桔梗信玄餅じゃないっすかぁ!俺、大好き!これっ!」

桔梗信玄餅…。山梨県の有名な銘菓である。

「喜んでくれて、嬉しいよ。じゃあ…璃緒、帰ろっか」

「うん!かねみつおにいちゃん、あらたおにいちゃん、またね!」

小さな手を、ヒラヒラと振った。

「またね、璃緒ちゃん」

“また”は、あるのかどうか分からないけれど…。車が見えなくなるまで、二人で見送った。

「…帰っちゃったね…」

「そうだな…俺達も帰ろう」

公園に植えられた、ソメイヨシノ。暗い空にぼんやりと浮かんで見える…。雨に濡れた花びらが、風に千切られて宙を舞い、やがて地に落ちる…。

「…明日晴れたら、桜見に行こっか?」

「…晴れたらな」

思っていたことは同じだった。

「あ。それより、まず…信玄餅!一緒に食べよっお茶淹れるからふふっ

ニコニコしながら、紙袋に指を差す。

「まだ夕飯前だろ?ホント、食いしん坊だな?ふふっ」

「今、始まったことじゃないっしょ?これはね、別んとこに入るのーっ」

「はい、はい…分かったよ。冷えるから、帰るぞ」

真行寺の腕を取って歩き出した。子供の世話…。最初は戸惑って、今日が長く感じるのだろうと思っていた。だけど、思っていた程ではなく寧ろ楽しく過ごせた気がする。

ほんの小さな嫉妬以外は…。

こんな春の一日も、きっと悪くはない…。


…オシマイ。o(^-^)o
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