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真三洲のプチ小説 

『夏の夜空に咲く花』


今年も、この時期がやってきた…。

「…えーっと、浴衣の帯の結び方…検索!っと」

カチッと、クリック。真行寺は真剣な顔をして、パソコンの画面を見つめる。

「…えーっとぉ…こっちを…こぉ持ってきて…ん?」

真行寺の腰には、浴衣の帯。何故か?と言えば、三洲と花火大会に行く約束をしていたからだ。勿論、浴衣を着て…。昨年は、近くの神社のお祭りがあるからと、三洲の実家へ泊まりに行った時、三洲の母親に浴衣を着せて貰った。その際、帯の結び方を教われば良かったのだが…、浴衣姿の三洲に見惚れて、それどころではなかったのである。まぁ…そんなところは真行寺らしいと言えば、それまでなのだが。今年は、三洲の実家にお泊りの予定はないし…。

『来年は二人で…』

という三洲の希望もあって、浴衣を着るのなら、着付けをマスターしなければならない。一番の問題は、帯の結び方なのである。

「…あれ?意外と簡単かも…」

真行寺が挑戦していたのは、貝の口という結び方。思っていたよりも簡単に出来た。

「やりィ!俺でも出来た!」

嬉しくて、直ぐさまリビングにいる三洲のところへ、スッ飛んで行った。

「ね、ねっ!アラタさん!見てっ!」

「…何だよ?騒々しいな…」

ソファーに腰掛けて、文庫本を読んでいた三洲が面倒くさそうに、真行寺を見た。

「帯、結べたよ花火大会は、浴衣に決定~!」

「…ぷっ…あははっ!」

「…あっ、何笑ってんの!?」

Tシャツの上に浴衣の帯。何か変。仕方がないことだけど、真行寺だからこそ…やっぱり笑える。

「…だって、お前…その格好可笑しいぞ?くくくっ…」

「しょうがないじゃんっ!帯の結び方、練習したんだもんっ」

三洲にも浴衣を着てほしいからと、ある意味…真行寺は必死なのだ。

「と、とにかくさっ…アラタさんにも伝授するからねっ!」

「…はぁ?何でだよ?」

「何でって…、俺の帯結んで貰わなきゃだもん

「…めんどくさい」

ぷいっと横を向き、さっきまで読んでいた文庫本に目を向けた。

「もぉっ…めんどくさいって言わないでよっ!今日はっ、二人で浴衣着てくんだからーっ!」

ちょっぴり揉めた、昼下がり…。



陽が傾き始めた頃、昨年買い揃えた浴衣を引っ張り出した。花火大会は19時半から始まる。ちょっと早めに支度をして、場所を確保したい。車は会場に程近いデパートの駐車場に置いてしまおうと考えていた。

「アラタさん、もうそろそろ着替えよっ?」

浴衣を持って、リビングへ…。

「ああ…そうだな」

時計をチラリと見て返事をした。先程、真行寺から帯の結び方を一応教えて貰ったが…、上手く結んでやれるか分からない。

「はい、これ肌襦袢」

「…何か、これ暑そうだな?」

「うん、そうなんだけど…。多分、暑くて汗かきそうだし…これ着てれば、汗で浴衣が肌にくっついてこないじゃん?せっかく浴衣着るんだから、快適に過ごさなきゃね」

「…なるほどねぇ」

着ていた服を脱いで、肌襦袢を着る。その上に浴衣を羽織り、動きが止まった。

「…左が上…だったよな?」

「うん、そうだよ。ちょっと待って、やってあげる

真行寺は自分の方を後回しにして、先に三洲の着付けを手伝った。

「…アラタさんって、ホント細いね…」

「…そうか?」

浴衣の腰紐を、きゅっと結んだ。

「うん。ね?キツくない?大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「じゃ、帯結ぶね

三洲の体を反転させて、角帯を腰に巻いていく…。三洲は細身だから、三回巻けた。

「アラタさん、締めるからね…」

帯を三回巻いたところで、ぎゅっと締めた。

「う゛っ」

「…あっ、ごめん…苦しい?」

「…お前、力任せにやっただろ?」

振り向いて、ジロリと睨む。真行寺は、蛇に睨まれた蛙のように、ちょっぴり縮こまった。

「だ、だって…しっかり締めなきゃ、解けちゃうじゃん?…それにぃー、解いて良いのはー…俺だけ!?みたいなふふっ

縮こまった表情も、いつの間にかデレデレとだらし無い表情に…。見兼ねた三洲は、思わず真行寺の頭にゴン!と一発、ゲンコツを落とした。

「いって!」

「…つべこべ言ってないで、早くやれよっ」

「もぉっ、すぐ暴力振るうんだからーっ!…タンコブ出来ちゃうよ…ブツブツ」

こうなることは日常茶飯事…。ブツブツ文句を言いながらも、手元をサッサと動かし、帯を結び終えた。結び目を中心より少しだけ横にずらして…。

「…よしっ!出来た!」

「ありがとう」

「アラタさん、カッコイイ~

三洲の前に回って、ぎゅ~っと抱きしめた。居心地は良いけれど…。

「…真行寺、暑苦しい」

思わず出てしまう、苦情。これは別に、意地悪とかではないけれど…。これから出掛けるのだから、早くしなければ。真行寺の体を無理矢理離した。

「…お前も支度しないとだろ?」

途中で、三洲の着付けを手伝った為、真行寺はまだ肌襦袢しか着ていなかった。

「うん今から着るから、手伝ってね

三洲の頬に素早くキスをして、肌襦袢の上に浴衣を羽織る…。腰紐も結んで、角帯を手渡してから三洲の前に後ろ向きで立った。

「さっ、俺の帯結んで

「…えーっと?始め…半分に折るんだったな?それから…腰紐の上に沿って巻く…真行寺、ちょっと押さえてろ」

真行寺から教えて貰った通りにやってみる…。真行寺は太ってはいないが、ガッチリとした体型なので、帯を二巻きしたところでぎゅっと締めた。

「苦しくないか?」

「うん、平気」

「あとは…こうして……っと」

どうにか帯を結び終え、真行寺の尻を軽くピタンと叩いた。

「出来たぞ」

「ありがと

これで支度も整った。あとは出掛けるだけ。必要な物を持って、玄関へ…。下駄を履こうとすると、

「ちょっと待て。…お前、まさか下駄で運転するんじゃないだろうな?」

「…あ。そっか…」

真行寺は、車で履き替えられるようにスニーカーを持って行く。

「忘れ物、ないよね?」

「ないよ」

鍵を掛け、二人で部屋を後にした。


~・~・~・~・~・~・~


「あ。あれ、花火大会行く人だよね?」

「あぁ、そうだな」

デパートの駐車場を車で入って行くと、浴衣姿の親子連れや友人同士、恋人同士が歩いていた。ホントは、デパートに用もないのに車を停めるのは、正直心苦しいのだが…。今日だけはご勘弁下さい、という気持ちで、駐車スペースに車を停めた。二人は車から降りて、デパートを素通りし、ここから一番近い河川敷まで歩いて行く。

「良い場所、空いてるといいね

「…あのなぁ、良い場所なんて早くから取らないとダメだろ?」

「…そ、そうだけどさぁ。そうじゃなくて…」

花火は空に打ち上がるものだから。座る場所など、花火が見えさえすれば何処でも良いのだ。

ただ…。

三洲とイチャイチャしたいから二人で寄り添って、綺麗だねって…。ここに来る前からずっと、真行寺の頭の中は、この妄想でいっぱいだった。

「…そうじゃなきゃ、何なんだよ?」

三洲も何となく察知していたが、敢えて意地悪な口調で言ってみた。

「…もぉっ…分かってるクセに。意地悪」

一番近い河川敷まで出て行くと、当たり前だが、人でいっぱい。座る前に、夜店で夕飯代わりの食べ物を物色する。

「アラタさん、何にする!?俺はねぇ…焼きそばとー、お好み焼きも良いなぁ…焼き玉蜀黍も食おっかな~

「…お前、店全部制覇する気じゃないだろうな?」

「しないってば~。いくら俺でもぉ、それはない!ない!」

「…どうだかなぁ?」

…結局。

始めに言った物に加え、焼き鳥も捨て難い!とか、甘い物も欲しいからとクレープまで買い、いつの間にか両手荷物になってしまった。

「…お前、こんなに食えるのかよ?」

「大丈夫腹減ってるからふふっ

「…ったく」

それとは逆に、これだけで足りるのか?と、言った方が良かったか!?三洲は心の中で、そう思っていた。二人で歩きながら、座れそうなスペースを探して…。

「あ、あの辺空いてるね」

皆よりも少し離れた場所に、持ってきたレジャーシートを敷き、携帯電話で時間を確かめた。

「もうじき始まるよその前に腹拵えしなくっちゃ~ふふっ…でも、その前に~…ビールで乾杯しなきゃ

「お前、運転手のクセにビール飲むのか?ダメだろ」

常識、常識。

「アラタさんは普通ので…俺はノンアルコール。飲んだ気しないけど、運転手だから我慢するよ

今の時代、ノンアルコールの飲み物が出回っていたんだった。

「…それなら、いいか」

真行寺から受け取った缶ビールを、プシュッと開ける。

「じゃ、乾杯

「乾杯」

一口飲んだところで。

「アラタさん、酔っちゃっても大丈夫だからね?俺がお姫様抱っこして、駐車場まで連れてって、あ・げ・るっぐふふっ

「アホかっ!」

「いてっ!」

真行寺の額をピシャっと叩いた。絶対、酔ってたまるか!恥ずかしいし、一番近い河川敷とは言え…ここからデパートまで、ちょっと距離があるのだから…。

「…もぉ、ちょっとからかっただけじゃん…」

大好きな三洲に、いつでもちょっかいを出したい真行寺であった。そうこうしてる間に、藍色の空に向かって、ズンという音と共に花火が打ち上がり…空いっぱいに花が開く。少し後に聞こえるドン!という音…。

「始まったねっ

嬉しそうに、はしゃぐ真行寺。次々と打ち上がる花火を見上げて、暫し…時を忘れる。

「…今日…晴れて良かったな」

「そうだね久々に外でデート出来たし

真行寺は、焼きそばを食べるのに忙しいようだ。ホントに食いしん坊。でも、その食べっぷりには惚れ惚れしてしまう…。三洲は焼き玉蜀黍を食べながら、花火を見ていた。

「アラタさん、何か…リスみたいで可愛いふふっ

「うーるーさーい。黙って、花火を見てろよ」

「はーい…」

と、言いつつ…。チラッと三洲を盗み見る。花火の光に浮かび上がる、三洲の横顔は…やっぱり綺麗。花火も綺麗だけど、三洲も綺麗…。何年後かに、この若かりし三洲の姿をまた思い出す時が、きっと来るのだろう…。夏の残像のように。勿論、その時も一緒にいたい…。

「マンションの窓から見るよりも…迫力あるね

大きな花火を近くに感じて…。三洲は真行寺の肩に凭れて、そうだな…と、応えた。そーっと、そーっと…三洲の肩を抱き寄せる。

「花火…綺麗だな」

「うん、綺麗だね

三洲の髪に頬をつけて…。暫く、ずっと…花火を見ていた。お互い、何も言わずに…。


~・~・~・~・~・~・~


夏の空を華やかに演出していた花火も、終盤を迎える…。花火の一つ一つに、花火師の魂が込められているから、あんなに素晴らしい花火が見られたのだ…。

「時間的に、次で最後かな?」

もうじき21時になる。

「そうだな…最後はニ尺玉だろ?」

ドン!

本日、一番大きな花火が打ち上がった…。空を埋め尽くすような、色鮮やかな光が散っていく…。まるで、星が降るように、キラキラと…。花火が消えてなくなる頃、見物客が拍手を贈った。

「…終わったね。帰ろっか」

空が花火の余韻を残しながら、少しづつ…いつもの東京の夜空に戻っていく…。

「花火…良かったな」

真行寺の手に触れて、そっと手を繋ぐ…。何も言わずに手を握り返して、

「うん…また見に来ようね

今日を過ぎれば、一つの思い出となり…。二人の胸にコダマする花火の音。

この夏も、もうすぐ終わる…。


…オシマイ。o(^-^)o
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