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真三洲のプチ小説 

『夢の淵』


真行寺の様子が、おかしかった…。妙にヨソヨソしい。本人は、いつもと変わらない素振りをしているのだろうが…。

…俺には分かる。

会話も何となく…少なくなった気がしていた。交わす会話の一言一言も力がない…。嫌な予感がしている。真行寺の口から発せられる、次の言葉に俺は怯えている…。真行寺の携帯へ、頻繁に掛かってくる謎の電話。その度に真行寺はコソコソと、場所を自室へと移動する…。

俺に聞かれると、マズイことなのか?

だけど俺は、真行寺の部屋の前で、聞き耳を立てようなど、そんなことはしない。

傷つくのが、コワイから…。

だから、平静を装う…。

リビングで、黙って待っている。テレビは点けっ放し…何も耳には入ってこない。

「…あ、アラタさん…。俺、ちょっと…出掛けてくるね…」

背後から、申し訳なさそうな真行寺の声がした。

「…こんな時間に、どこまで行くんだ?」

もう、22時を過ぎているのに…。真行寺は、目も合わさずに「…ちょっと…」と言い残して、出掛けてしまった。

その夜、真行寺は帰って来なかったらしく…。朝目覚めると、一人ぼっちで切ない気持ちに陥る…。こっちからどんなに誘っても、それに応えてくれることもない…。

真行寺は、俺を捨てる気なのか?

あんなに俺を好きだと言っていたのに?

そんな権利、アイツにはない筈だ…。真行寺は、俺の…大事な、大事な所有物なんだから…。勝手なことはさせない。

抜け殻のような日々を送り始めたある日のこと…。会社から帰宅すると、テーブルの上に書き置きを見つけた。その紙の上には指輪が置かれている。勿論…以前、三洲から真行寺に贈られた銀色の指輪。

慌てて、書き置きを読む…。


+++++++++++++++

アラタさんへ

俺はここを出て行きます。

何の相談もなく、突然でゴメンね。

アラタさんの顔を見ると、言い出せなかった。

俺、好きな人出来ちゃったんだ。

アラタさん以外、好きになる人なんていないと思ってたけど…。

今はその人のことしか見えません。

今まで本当にありがとうございました。

アラタさんのことは忘れません。

さようなら。



真行寺より


+++++++++++++++

冷たく、冷めた文章…。

三洲は真行寺の部屋へ走って行き、勢いよくドアを開けると…。そこは蛻の殻だった。

いつの間に…?

膝の力が抜け、その場にヘタリ込んだ。視界が歪み、フローリングの上にパタッ…パタッ…と涙が落ちた…。

嫌な予感が的中…。

「…真行寺…一体どこへ…」

震える声で、空っぽになった空間に、言葉を投げた。真行寺が残していった指輪を握りしめ…声を殺し、独りきりで、ただ泣いていた…。

世界が揺れている…?眩暈のように、体が揺れている…。

『…アラタさん…』

真行寺の声…?風の音?それとも…幻?

『…アラタさん…』

まだ、聞こえている…。夢なら、醒めてほしい…。

「アラタさん!」

さっきよりも、大きい声で名前を呼ばれて、ハッと目を覚ました。三洲の目に飛び込んできたのは、ベッドサイドの明かりと、心配そうな真行寺の顔…。

「…真行…寺?」

「今、すっげ、魘されてたけど…大丈夫!?」

…夢…だったのか?

暗くて悲しい夢の淵から、真行寺が救い出してくれた…。何であんな夢を見たのか、分からない。三洲は起き上がり、真行寺の顔をもう一度見た。

「アラタさん…涙…」

三洲の頬に、涙の跡を見つけた真行寺は、親指でそっと涙を拭う…。

「…嫌な夢を見たんだ」

「嫌な夢?…どんな?」

涙を流してるなんて、夢の内容はきっと尋常ではないはず…。身内に不幸があった夢とか…?ベタながらも、真行寺の頭の中は色々なことが駆け巡っていた。

「…真行寺が……お前が…ここを出て行った夢だよ…」

「…俺が?」

だから…涙を流していた?俺の為に?

「…うん。書き置きと、指輪を残して消えたんだ…。好きな人が出来て、その人しか見えないって。何か…すごくリアルだったよ」

三洲は、そう言って俯いた。

「…ゴメンね、アラタさん…。夢の中で、アラタさんを悲しませるなんて…馬鹿な俺だね?でも…ここにいる俺は、そんなことしないから…安心して?アラタさんのもとを離れるなんて、有り得ないよ…」

三洲をパジャマの胸に抱き寄せた。

「…分かってるよ」

夢で良かった…。三洲のすぐ傍に、真行寺の温もりがある…。

「…今、何時?」

時間が気になって、真行寺は枕元の時計を見た。時計は、もうじき午前3時を指そうとしている。

「まだ寝れるよ寝よっ?」

そう言って、寝直そうと再びベッドに潜り込む…。

「…真行寺」

「ん?何?」

「…抱いてくれないか?」

「…え?」

真行寺はキョトンとして、三洲を見上げた。

「…忘れたいんだよ…。さっきの夢」

いつもだいたい、三洲に断られてしまう夜の営み…。我慢出来なくて、無理矢理な時もあるけれど。三洲の希望ともなれば、断る理由はない。

…て、ゆーか。

断るなんて、有り得ない。真行寺は“いつでも”ヤリたい人なのだ。

「…今からだと…朝ご飯作るの、遅くなっちゃうかもよ?それでも良い?ふふっ

嬉しくて、ちょっぴり勿体つけたりして…。

「…良いよ、別に。明日は休みじゃないか…」

二人でいつまでも、ベッドでゴロゴロしてたって良い…。

「…じゃあ…忘れさせてあげる

三洲の腕を取り、自分の胸へと引き寄せた。

「俺は…どこへも行かないよ?」
「…うん」

真行寺の胸に耳を当てると…確かに聞こえてくる、何の乱れもない胸の鼓動に安堵する…。

「…真行寺」

「アラタさん…愛してる

三洲に、ゆっくりと体重を掛けて甘く囁き、優しい眼差しで見つめた…。そして、真行寺の心地好い重みを受け止めながら、そっと瞳を閉じると…濡れた長い睫毛に、温かい口唇が降りてきた。三洲は、絶対に離れまいとするように、真行寺の広い背中へと、しっかりと腕を回した…。

ぎゅっ…と、力を込めて。

「…俺も…愛してるよ…真行寺」

真行寺の耳許で、そっと囁いた。

「…うん…分かってる

その言葉が、他のどんな言葉よりも嬉しくて…。こんな綺麗な人が、こんな自分の為に…。

…シアワセ

その幸せを噛みしめながら…三洲の口唇に、キスを落とした。


~・~・~・~・~・~・~


ベッドサイドの明かりを点けた…。

「…俺…どのくらい、魘されてた?」

真行寺の裸の胸に凭れて、頬を上気させた三洲が聞く…。一度眠ってしまえば、中々起きない、あの真行寺を起こしてしまったのだから、きっと相当だったのだと思う…。

「何かね…、声が聞こえてきたんだ。俺も何か夢見てて…どんなだったか忘れちゃったけどね?ふふっ…で、ふと目を覚ましたら、アラタさんが「…うっ…うっ…」って…何か、苦しそうにしてたから、慌てて起こしたんだよ」

三洲の額に、汗で貼り付いた前髪を弄りながら応えた。

「…そうか…」

苦しそうにしてた…?そうだよな…。真行寺がいなければ、俺は…どうにかなってしまうかも知れない。それくらい、真行寺のことが好きだから…。

「…起こしてくれて、ありがとな…」

後味の悪い、嫌な夢なら…もう見たくもない…。

真行寺の胸で、知らぬ間に深い眠りに落ちていた…。



翌日、時計が9時を過ぎた頃…。

「アラタさん

ひと足先に起きた真行寺が、まだ寝室で眠っている三洲を起こしにきた。

「…ん…」

「朝ご飯作ったから、食べよっ?」

エプロンをしたまま、三洲の顔を覗き込んだ。三洲は気怠そうに目を覚まし、真行寺の首に腕を絡めて引き寄せた。

「…おはよう、真行寺…」

「おはよアラタさん

いつもと変わらない、朝の光景に安心する…。見つめ合って、軽く触れるだけのキスをした。

「よく眠れた?」

「…お前のお蔭で、よく眠れたよ…ふふっ」

「それなら良かったふふっ

真行寺が、嬉しそうに微笑んだ。

「…さて…起きるか…」

真行寺の手を借りて、ゆっくりと体を起こした。

「…大丈夫?…俺、昨夜すっげ頑張っちゃったから…へへっ

「…まったくだ…ふふっ」

気が狂う程、愛し合った…。思い返せば…ちょっぴり恥ずかしい。だけど、心も体も満たされた…。

「支度して。用意しておくから

「ああ、ありがとう」

真行寺は寝室を出て行き、三洲は身支度を整えてから、キッチンへ…。食卓の上には、いつものように二人分の朝食が用意されていて、温かそうな湯気が立ち上っている…。

「今日は和食にしたよ

「…ああ、いいよ」

朝食は大半、トーストだけど…たまの和食も悪くない。真行寺はニコニコしながら、ネーブルオレンジを切っていた。ふわっ…と、柑橘系のさわやかな香りがして、思わず深呼吸…。

「これ、食後の果物美肌の為にビタミンC摂らなきゃね?ふふっ

三洲の頬を人差し指で、ちょんと突いて「これ、運んで」と、続けた。

「…何言ってんだ、お前は…ふふっ」

スマイルカットした、ネーブルオレンジをテーブルへと運ぶ…。真行寺ときたら、相変わらず明るいうちから可笑しなことを言う…。

美肌だと?

まるで、女扱いだな。

「だってぇ…アラタさんには、いつまでも綺麗でいてほしいんだもん

「…変なヤツ」

「ん?何か言った?」

「…いや、別に…ふふっ」

二人で向き合い、椅子に座った。ふと、真行寺の手元を見る…。夢の中で外されていた、プラチナの指輪はしっかりと左手の薬指に…。それだけで何だか安心して、胸が温まる…。

「…秋が近づいてきたな」

「ん?…そうだね

ほうれん草の味噌汁を啜りながら、真行寺が応えた。窓の外は雲ひとつない青空で…。開けてある窓から吹き込む風が、カーテンを揺らしている…。

とても、気持ちが良い…。

「ねぇ、アラタさん」

「ん?」

視線を、窓から真行寺へと移す。

「もうちょっと、秋が深まったらぁ…紅葉見に行かない?…まだ、二人で見に行ったこと…ないよね?」

「ああ…そう言えば、行ったことないな…」

花見なら、よく行ってるけれど。不思議と、秋の行楽シーズンは自宅にいることが多かった。

「俺、色々見て探しておくからさ

「…ああ」

「…その時は~、やっぱり弁当持ちで行きたいよね~ふふっ

「それは、お前に任せるよ…ふふっ」

「え~っ!?一緒に作ろうよぉ」

普段通りの、何気ない会話に、胸が躍る…。

「…面倒くさいだろ?」

「二人で作る方が、楽しいじゃ~ん

不意に訪れる、小さな幸せ…。ずっと、こんな日々が続けば良いと思っている…。真行寺が一途なのは、俺が一番知っているけれど…。

だけど、俺も決して負けてはいないと思う、真行寺を愛する気持ち…。あの夢で、またも自覚した。

真行寺は…分かっているのだろうか?

真行寺以上の、俺の一途な気持ちを…。


オシマイ…。o(^-^)o
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