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有り得ない組み合わせ小説。 

『ふたつの冬の物語1』


今年もまた、この季節がやってきた。
いつも以上に、二人で寄り添っていられる冬…。
街を行き交う恋人達は、互いの温もりを感じながら、イルミネーションの中を足早に通り過ぎて行く…。

成人した二人と、まだ高校生の二人の…そんな、二組のカップルの冬の物語…。



「真行寺、早くしろ」

「待ってよ、アラタさんっっ!」

会社を定時で上がり、夕飯も簡単に済ませた。
今日こそイルミネーションを観に行こうと、一つ年下の恋人が言うものだから、渋々OKをした。

この時期にしか観れない、幻想的な風景…。

イルミネーションの点灯は、日付が変わる直前までなのだが、明日も仕事があるし…出来れば手っ取り早く済ませてしまいたかった。師走となれば、やはりどこもかしこも、いつもより時間に追われるものだ。さっきから、玄関先で真行寺を待っているのだが、中々自室から出て来ない。

「…また、何を着て行くか迷ってるんじゃあるまいな?」

そう呟き、靴を脱ごうとしたら真行寺が漸く部屋から出てきた。

「ごめん、ごめん!!外寒いかと思ったら、着てく服迷っちゃった…てか!アラタさん、そんな薄着で良いのっ!?」

「…良いんだよ。あんまり着込むと、動きづらいだろ」

「そーゆー問題!?風邪ひいたら…!!あ

「なんだよ?」

「風邪ひいても大丈夫!俺が看病してあげるぐふふ

そう言われて、三洲は眉間に深~い皺を寄せる。

「…いいよ、遠慮しておく」

「ご要望があれば、添い寝もするよ

「聞こえなかったのか?遠慮する。だいたい、病人に添い寝するヤツがあるか。風邪が移るだろ…あ」

「ん?何?アラタさん

ニヤニヤとニヤける真行寺に、トドメを刺す。

「お前は大丈夫か。ふふっ」

悪戯っぽく笑った、その理由が分かった真行寺は、恋人に食いついた。

「むむむ!アラタさん?それは、どーゆー意味!?」

「そーゆー意味だ…あははっ」

「もぉっ!ヒドいじゃんっ!バカは否定しないけど、俺だって風邪くらいひくよっ!?」

「あー!もぉ、うるさい!!遅くなるから、もう行くぞ」

マジで遅くなってしまう。そう思った三洲は玄関の扉を開けた。

「あっ!!アラタさん!?待ってよっ!」

慌てて靴を突っ掛けたが…。

「あ!電気!電気!」

電気と玄関の施錠を忘れずに。そして、改めて三洲を追い掛けた。恋人は、エレベーターの箱の中で待ち呆けだった…。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


「…すっかり遅くなっちゃったスね、黒子っち」

「はい。だいぶ、冷えてきましたね」

ストリートバスケに夢中で、時間が経つのも忘れてた…。とっくに陽は落ちて、公園にはもう誰も居なくて…黄瀬と黒子の二人だけ。

「そろそろ帰りますか…?」

黒子が、帰り支度をしていると、別れを惜しんだ黄瀬が、黒子をその場で抱き竦めた。咄嗟のことで、少し驚いたものの…すぐに呼吸が苦しくなり、黒子は黄瀬に訴えた。

「…黄瀬君、苦しいです。そんなに力入れなくても…逃げたりしませんよ」

得意のミスディレクションで、消えられたら…悲しくなってしまうから、その前に手を打っておく。

「…黒子っち、今度いつ会えるっスか?」

「…分かりません。時間が合った時…ですかね」

二人は、別々の高校に通っている。黄瀬は隣の神奈川県、黒子は地元の東京都。黄瀬は学生の他に、モデルの仕事もしている為、東京で仕事の際は二人でこうして会ったりしている。

「俺、スゴく黒子っち不足なんスよ~…」

「…そう、ですか?ボクは全然大丈夫ですけど…」

「ヒドッ!!…俺達、一応付き合ってるんスよね!?…もう少し、俺の事…気にして欲しいっス…」

「…はあ…」

バスケバカで、恋愛なんかまるで初心者の黒子は、ちょっぴり困ってしまう…。今に至るまで、デートらしいデートも、ちゃんとした事がなかった。

「あ!!そうだ、黒子っち?今からイルミネーション観に行かないっスか!?」

少しでも長く一緒にいたくて、咄嗟に思いついた提案。

「今からですか?ボクは構わないですけど…黄瀬
君、帰るの遅くなりますよ?」

「大丈夫っス!最悪、黒子っちの家に泊まらせて貰うんで…」

「…ダメです。ボク達、まだ高校生ですから…」

「黒子っち…固いっスね

…つーか、女の子の台詞みたいっス?男同士だから家の人も気にしないと思うけど…。ま、黒子っちは、そこが可愛いんスけどね~

黄瀬の心の声なんて、黒子には届かないけれど…。

「…ダメですか?」

真っ直ぐな視線で、身長189センチの黄瀬を見上げた。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


「やっぱ、まだ混んでるね…」

「…そーゆー街だろ、ここは」

「そうだけど…腹減ってきたよ~、アラタさぁん」

ガッツリ食べてない所為か、渋滞の最中、真行寺がボヤく。

「…何か、雪が降りそうな空だな?」

窓の外を見ながら、三洲が呟いた。

「ね、俺の話聞いてる!?腹減ったんですけどー?」

「食ってきただろ?夕飯」

半ば呆れた表情で、三洲が応えた。

「もう粉れちゃったふふっ

「…どーゆー胃袋してんだ、お前は。全く、呆れるわ」

「ね、ねっ、だから、あそこ寄っても良い!?」

真行寺が指を差しているのは、有名なファストフード店。このまま放っておけば、隣が煩いだけなので諦めた。

「…しょうがないな…。渋滞もしてるし、少し時間を潰すか」

「そうこなくっちゃ!アラタさん…何食おっかな~♪アラタさんは何食う!?ふふっ

「…はぁ?俺はいいよ。コーヒーだけで」

「えー!チーズバーガー食おうよ~!一緒に

「…何でチーズバーガーなんだよ?」

こんなやり取りをしながら、ファストフード店に車を停め、店内へ移動した。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*


「何だか…雪が降りそうですね?」

公園を後にした二人は、駅を目指して歩いていた。更に冷え込んできて、掌に息をハーッと吹き掛ける…。

「そういや、天気予報で降るかもって言ってたっス。ねぇ黒子っち?ストバスやったら、何か…腹減んないっスか?」

「そうですね…少しだけ」

「マジバ寄ってっちゃいます?…あ、でも、そうすると夕飯入んなくなっちゃうか…」

そこまで言って、黒子を見るとニコッとしながらも、少し照れた表情で応えた。

「良いですよ。母に今日は黄瀬君と会うから、夕飯いらないって言ってきましたから…」

「そうなんスか!?ラッキー♪」

「え?」

「あ…いや、その…何でもないっス…あははっ

黒子っちってば…その気なさそうにしてるけど、ホントは俺のこと…相当、意識してるっスよね!?

黄瀬は、弛みそうになる頬を引き締めながら、それでも遠慮がちに…黒子へと手を伸ばした。

「…黒子っち…手を繋いでも良いっスか?」

「え…あ…はい」

黄瀬の手に比べたら、黒子の手は小さめ。黒子の冷えた細い指に、そっと自分の指を絡めた…。

「…黄瀬君の手、温かいですね。手袋いらないくらいに…」

「そうっスか!?…いつでも温めてあげるっスよ

黄瀬が嬉しそうに言うと、黒子は恥ずかしそうに俯いた。

「…何か…イヤらしいです…その言い方」

「えっ!?イヤらしくないっスよ!」

「黄瀬君が言うと…イヤらしく聞こえます」

「ヒドッ!!黒子っち、考え過ぎっスよ~!!」

折角、甘い雰囲気まで持ち込めたのに…。軽く流してしまっても良いような、些細な一言に黒子は、敏感に反応してしまったのだ。


°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


「だいぶ、道路が空いてきたんじゃないか?」

店のウィンドウ越しに外を見た。先程よりも車の流れが、スムーズになってきたようだ。コーヒーだけにするつもりだったのだが、真行寺が煩いので仕方なく、チーズバーガーを一つ食べた。

「…しかし、よく食うな…お前は」

「だって~…一個じゃ足りないよ~」

食いしん坊というか、何というか…。毎回、毎回のことで。軽く夕飯を摂ってきたのにも関わらず、バーガーを3個、あとポテトのLサイズ、チキンナゲットとドリンクはコーラのLサイズ…。

「それにしても、感心するわ…お前の、その食欲」

「ほら~、腹が減っては戦は出来ぬって言うじゃん!?」

「戦に行くのか?」

「いかないけどー…アラタさん、いつもに増して意地悪じゃね!?」

「気の所為だ…ふふっ」

真行寺をからかうのは、今始まったことではなく、日常的なことなのだ。

「アラタさん、お待たせ出よっか」

「ああ」

注文したものをすべて平らげて、息つく間もなく二人は店を後にした。時刻はもうすぐ20時を差そうとしている。道路は先程よりも空いて、目的地までは然程時間も掛からないだろう…。少し歩くことになるが、昨年も利用したパーキングに向かう。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


一先ず、駅を目指すのを断念して、お馴染みのファストフード店のマジバへ寄り道をする。学生の財布に優しい店なので、黒子のチームメイトの火神は、いつもバーガーをドカ買いしているのだ。一方の黒子は、この店のバニラシェイクが大のお気に入り。

「黒子っち、それだけで良いんスか!?」

「はい」

バーガーとポテトのSサイズ、それとバニラシェイク。スポーツをやっている高校生とは思えぬ程の量。黒子は、超がつく程の少食なのだ。

「それでよく持つっスね?」

黒子は元々、体力があまり無く、周りに比べたら体も小さい。試合も40分フルで参加することが出来ないのだ。

「皆みたいに、たくさん食べれないこと…黄瀬君も知ってますよね?」

「知ってるっスよ。中学ん時から」

「もっと、たくさん食べれたら…ボクも今頃、黄瀬君みたいに、大きくなれたかも知れないですね」

「黒子っちは俺達より、体は小さいけど…その分誰よりも努力してるし、バスケに対する思い入れとか…俺、黒子っちのこと、凄く尊敬してるんスよ…」

「…どーも…」

面と向かって言われると、少し照れてしまう…。
黒子は、バニラシェイクを一口流し込んだ。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


「駐車場空いてて良かった~…アレ?アラタさん、雪降ってきたよっ!」

「…ああ、今日降るって言ってたからな」

そう言いながら、車の外に出ると半端ない寒さに、身が縮こまる。風が吹いてないだけ、まだ救いなのかも知れない。

「アラタさん、入って肩に雪が積もっちゃうから…」

ここは生憎、傘が一本しかないので…真行寺には嬉しい相合い傘で。滅多にない相合い傘に、真行寺の心は踊る…。どさくさ紛れに、三洲の肩を抱き寄せた。

「…真行寺、目立つからやめろって…」

「あ、やっぱり~!?残念~」

思っていたことが的中して、真行寺は肩を竦めた。相合い傘出来ただけでも、ラッキーとしよう。それだけでも、充分に幸せ?なのだ。イルミネーションが綺麗な、けやき坂までの道を二人で、肩を寄せて歩く…

「アラタさん?手…繋ご?」

「…だから、真行寺」

「大丈夫だって…。俺のポケットに手を突っ込んでれば、分かんないよ誰も見てないからっ…ねっ!?」

「…まったく、しょうがないヤツだな…お前は」

そう言って、真行寺の上着のポケットに手を突っ込むと、真行寺が指を絡めてきた。

「ほらっ、すっげ冷たいんだから…アラタさんの手」

「…さすが、人間カイロだな…ふふっ」

真行寺の掌の温かさに、何だか心も和む…。


*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°*°


「やべっ!黒子っち、雪降ってるっスよ!!」

地下鉄のホームから、地上へ上がってくると外は、雪がちらついていた。

「黄瀬君、傘持ってますか?」

「持ってないっス…黒子っちは?」

「…忘れました。この辺り…コンビニなさそうですね。どうしましょう…」

イルミネーション見るのは、予定外だったけれど…黒子も黄瀬と、少しでも長く一緒に過ごしたかったから、少しくらい遅くなるのは構わなかった。

例え、雪が降ってこようとも…。

「どうせ、すぐ止むかも知れないし…そのまま行こっか?」

「はあ…そうですね」

少し遠くにイルミネーションが見えているから、そのまま行くことにした。二人で歩いている間にも、すぐ止むどころか…静かに雪がしんしんと降り積もる…。

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