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early spring6 

early spring6


そして、待ちに待った"節分の日"がやってきた。
この日、真行寺は仕事を定時で上がり予約しておいた恵方巻を、行きつけのスーパーへと受け取りに行った。

こっそり、袋の中を覗く。

「うわっ美味しそう早く食べたいなっ

…アラタさんは食べ切れるのかなぁ?

そんな心配までしてしまうけど。真行寺は多分、楽勝。恵方巻は、色んな具を巻き込んでいるから、普通の太巻き寿司よりも太い。
真行寺は、もっと幸せになりたいからと、一番具の多い恵方巻を注文したのだ。

「アラタさんと二人で幸せになるんだ今以上にっっ!!」

だから、絶対に無言で食べるぜ!!

スーパーの入口で、人目も気にせずガッツポーズをキメた。

「…あ…」

そして、我にかえると…婦人たちの冷たい視線が突き刺さる。

「…ははは…」

そうだっ!こんなことしてられない!

真行寺はピュ~っと、その場をダッシュで立ち去り家路を急いだ。


~・~・~・~・~・~・~


自宅マンションの前まで来て、愛の巣がある階を見上げると…灯りが点いていた。

「アラタさん、帰ってきてる

真行寺は、ルンルン気分でエレベーターに乗った。


「たっだいまー」

玄関を開けるなり、両隣の住人に聞こえるくらいデカイ声で叫ぶと、先に帰宅していた三洲がリビングからひょっこり顔を出し、

「お帰り、真行寺。それと、お前声デカ過ぎ」

近所迷惑だろ…。

「えへっごめん煩かった?」

三洲に"お帰り"とお出迎え(?)されるのは、滅多にないことだからテンションが、グンと上がる。
声がデカ過ぎるって言われたってへっちゃら~。

「今日は早かったんだねね、ねっ、アラタさん、恵方巻見てっ!すっげ美味そうだよほら

真行寺は嬉しそうに、袋から恵方巻を取り出した。

「ほぉ…結構デカイな?これ、マジで丸かぶりするのか?俺は、切って食べるよ…」

それを聞き逃さなかった真行寺は大慌て。

「ダ、ダ、ダメだって!切ったらダメなのっ!」

「何でだよ?」

かぶりつくなんて、食いにくいだろ?

三洲は眉を寄せた。

「そうだけどー、"縁"が切れないようにって意味も含めて、丸かぶりなんだからっ」

三洲と縁が切れてしまうなんて…冗談じゃない、絶対に嫌だ!

「…そうなのか?」

「そうなの

だから、丸かぶり

「…俺、今だってすっげ幸せだけど…もっと幸せになりたいんだふふっ

そう言って、三洲を抱きしめた。

「…真行寺」

三洲は真行寺の背中へ腕を回し、広いその胸に凭れた…。伝わってくる胸の鼓動に。命の音に耳を傾けている…。

ぎゅるるるるぅ~…。

…まただ。

「あ…ごめん」

「…おーまーえー、ホント、ムードがないヤツだな?前にもあったよな?」

いつも邪魔をする、真行寺の腹の虫。

「…だって、しょうがないじゃん。腹減ってるんだから」

早く恵方巻食べようよ

三洲から体を離して、その準備を始めた。


~・~・~・~・~・~・~


「今年は南南東…だから、こっちかな?」

恵方巻のオマケに付いていた、方位磁石を使ってその位置を確かめる。意味のない方角を見ないように、しっかりと。

だって、幸せになるんだもん

「はい、アラタさん。一本取って」

「ああ、ありがとう」

真行寺も恵方巻を手に持った。

さぁ。ここからが勝負だ!喋らないぞ、絶対に!

"末永く幸せでありますように"

南南東に願いを込めて、いざ…。

「いただきま~す!」

恵方巻を丸かぶり

「……………」

「……………」

二人は無言で恵方巻を頬張る。
隣の三洲をチラリと盗み見て…ドキッとする。どちらかと言えば、おちょぼ口の三洲だが…。その三洲が大きく口を開けて、恵方巻にかぶりついている。そういう食べ方なのだから仕方ないことだが…。
三洲の場合、そんなことさえ色っぽく見えてしまうのだ…。口唇の動きも気になり、ジッと見つめる真行寺。

あの口唇にキスしてるんだ…。

改めてそう思ったら、何だか恥ずかしくなって…頬が熱くなる。

「ん?何だ?真行寺」

…はっ!

三洲はもう恵方巻を食べ終えて、こちらを見ていた。真行寺はボーッとしていて、まだ少し残っている。"何でもない"とウッカリ言いそうになったが…直前に気がつき、手を左右に振り"何でもない"をアピールし必死で残りを平らげた。

危ない、危ない…。
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